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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.90
2001.01.26
 

きのこの遺伝子診断


マツタケ菌根を判別する

−−−根? それとも菌根?−−−

 

 野生や市販のいわゆるきのこは,担子菌類などが繁殖のために作る「子実体」という器官であって,これは高等植物では花に当たるものです。これを作るために菌類は,地中や木材中で菌糸の状態になって生息しています。

 子実体ができるとその形態や胞子できのこの種類は分かりますが,菌糸の状態では特徴がないので種類を決められません。

 マツタケなどの菌根性の菌類は,アカマツなどの樹木の細根に宿り,菌根という共生状態を作って生きています。

写真1 発生したマツタケ(子実体)

写真2 アカマツの根とマツタケの菌根

   ↑菌根の塊

写真1. 発生したマツタケ(子実体)

写真2. アカマツの根とマツタケの菌根

問題:

 マツタケなどは菌根から人為的に子実体を発生させることが困難なため,菌根の状態ではどのきのこの菌根か決定することができず,マツタケの生態や栽培の研究は進みませんでした。

問題の解決法:

 マツタケのDNA上に特異的に存在するウイルス様遺伝子をマーカーとして使うことにより,菌根の状態でマツタケのものか否か判別できるようになりました。この結果,マツタケの生態のモニターや人工栽培研究の評価が容易になります。

写真3 菌根の例(アカマツの細根にできた菌根)

写真3 菌根の例 菌根のないアカマツの細根

写真3. 菌根の例

(目盛り:1mm)

左:アカマツの細根にできた菌根(黒い棍棒状のもの)

右:菌根のないアカマツの細根

写真4 DNAの電気泳動

写真4. DNAの電気泳動(→:マツタケに特有の遺伝子マーカー)

1〜11:マツタケ 12:アメリカマツタケ 13〜16:バカマツタケ

17〜19:カキシメジ 20〜21:シロシメジ 22〜23:キシメジ

24:シモフリシメジ 25:ミネシメジ 26:ニセマツタケ 27:ニオウシメジ

 

 

輸入シイタケの投げかけた問題

 

 きのこ生産は,林業粗収入の約4割を生み出しており,農山村の経済安定と住民の定住に大きく貢献しています。

 しかし,昨今の無秩序なシイタケ輸入量の増大は,きのこ産業の壊滅と山村の崩壊,そして林業の衰退を助長すると懸念されています。

 

乾の63%,生の30%が輸入物で占められる日本のシイタケ市場

 従来,乾シイタケは,日本が誇れる数少ない輸出林産物として認知され,多くの外貨を稼いできました。年に2,000トンを越える輸出量を誇った時代もありましたが,昨年度は逆に,国内消費量の63%に当たる乾シイタケ約9,200トンと,約30%に当たる生シイタケ31,000トン余りが輸入されている状態です(図1)。

図1 乾シイタケ輸入量の推移

図1. 乾シイタケ輸入量の推移

 輸入シイタケの急増はシイタケの安値安定をもたらし消費者には歓迎されましたが,一方で国内のシイタケ生産を急激に衰退させています。特に,これまで中山間地域の経済と人的確保の要であった,乾シイタケ生産に大きな打撃を与えており,その対策が急がれています。

 

急がれる品種育成者権の国際的な保護と適切な品種判別法の開発

 輸入シイタケのほとんどは中国産です(図2)。1993年から7年間にわたり中国産の生シイタケの系統を調べた結果,3系統が検出されました。主要な系統はAとBです。

 系統A:1998年から検出されている系統

 系統B:1993年から現在まで継続して検出されている系統

 系統C:1994年と1997年に購入した子実体から分離された系統

図2 輸入した生シイタケ

図2. 輸入した生シイタケ

 これら3系統と我が国のシイタケ品種との関係を調べた結果,系統A,B共に,我が国の主要な品種と同等の系統であることが推定できました(図3)。これは我が国の優良品種が,外国で流用されている可能性を強く示唆しています。

図3 図2のシイタケ2個の品種調査

図3. 図2のシイタケ2個の品種調査

対照品種FMC156との対峙培養の結果,同等(系統B)と判明した。

※対峙培養:2種の菌が同等の場合は,接して植え付け培養しても境界線ができない。

 このような種菌の流用など国際間の品種育成者権の侵害の問題を解決するため,また,安価な輸入シイタケの増加を抑制して日本のきのこ産業を守るためにも,当きのこ科では,DNA判別法を中心とする国際標準のシイタケ品種判別法の確立を急いでいます。

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