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独立行政法人
森林総合研究所
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第98号
平成13年10月31日発行
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 森林を造る新しい技術


 温暖多雨な気候に恵まれた日本の国土は,長い時間のうちには,自然の力で森林に覆われます。このような恵まれた環境でも,さらに,苗木を植え,下草を刈るという造林の仕事を加えると,より短い年月で確実に立派な森林が造成できます。また,乾燥地や痩せた土壌などの地域では,人工的な手助けをしないと,森林を造成することがとても難しくなります。このように,大自然の力に人間の力を加えることによって,より確実に地球を緑で覆うことができます。造林の仕事は,人間にとっても,自然界に生きる多様な生物にとっても,安全で豊かな緑の地球をつくるために欠かせない重要な仕事です。
 造林という仕事は,伝統技術に頼っている面が多いのですが,古い仕方では,効率が悪いという欠点があります。このため,森を造り育てる作業の能率をあげ,また,様々な森林の作り方に柔軟に対応できるような有効な技術の開発に取り組んでいます。ここでは,コンテナ苗とマルチングの研究開発を紹介します。この二つの技術を組み合わせると,効率がよく,自由度の高い新しい造林作業が実現できるものと期待しています。

軽量・小型で高品質のマルチキャビティコンテナ苗

 日本や欧米では,古くから,根から土を落とした「裸苗」が普通でした。裸苗は軽量である反面,大きな穴にていねいに植えなければならないので手間がかかる,植付けが春と秋の短期間に限られるという欠点がありました。このため,欧米では円筒形容器で育てる縦長のプラグ苗,日本では植木鉢型のポット苗が試され,植付作業能率がよくなる,無雪期なら何時でも植えられる,育苗が簡単という目覚ましい成果がありました。また,裸苗の活着が難しい熱帯や乾燥地では,ポット苗が広く使用されてきました。

図1 ポット造林による8年生ウバメガシの根の激しい変形

図1.ポット造林による8年生ウバメガシの根の激しい変形(左は側面,右は底面)

(宮崎県・相互造林株式会社提供)

図2 スギコンテナ苗とポット苗の根系の比較

図2.スギコンテナ苗(上段)とポット苗(下段)の根系の比較

各左側は苗,右側は植栽3年後で,コンテナ苗は,根同士の絡みがないことが分かる。


 ところが,このプラグ苗やポット苗は,容器の内部で根がぐるぐる回るという欠点がありました。山に植えたあとぐるぐる回りで成長するため,根が互いに絡みあって,成長不良や根腐れによる枯死が起きたり,根が塊状になって,風で木が倒れるという重大な欠陥のあることが明らかになりました。
 しかし,容器の底面を大開口とするなどの工夫を凝らしたマルチキャビティコンテナがヨーロッパを中心に開発され,根の変形の問題がほぼ解決されました。これは,根が土中から出て,空中に突出しようとすると,空中では根が生活できないため,根の成長が停止する「空気根切り」現象を利用したものです。
 この方式を採用して,我が国や東南アジアの樹種や成育環境に適したコンテナ苗の育成技術について研究開発を進めて来た結果,根の変形の害がない,苗の生産効率が高い,小型軽量なので運搬貯蔵が簡単,植付け能率は従来の裸苗の5倍以上は期待できるなどの成果を得ました。また,このコンテナ苗の機械植付装置の試作開発を進めています。

図3 スギとコナラの一年生コンテナ苗
図4 マルチキャビティコンテナ
図3.スギとコナラの一年生コンテナ苗
図4.マルチキャビティコンテナ(REX250 RFD/JICA)

下刈省力の期待の星,マルチング

 造林作業で最も苦労の多いのが下草刈りです。これを解決するのに,大型機械による刈払,除草剤の使用などが行われています。マルチングは,地表をいろいろな素材で覆い,植えた植物のため,水分保持,温度保持,雑草防除などを行う技術で,畑作農業では広く普及しています。このマルチングを,主として雑草の防除のために活用し,下刈の省略あるいは大幅な省力を図ろうというものです。

図5 マルチ効果試験

図5.マルチ効果試験(森林総研構内)

図6 マルチとコンテナ苗によるケヤキ植栽

図6.マルチとコンテナ苗によるケヤキ植栽

(関東森林管理局東京分局技術センターとの共同試験地)


 強度と耐久性に富むシートやマットで林木の根元を覆えば,下草の発生・成長をほぼ完全に抑制できることは明らかなので,研究開発のポイントは,マルチの設置作業能率の向上と,低価格な資材の活用にあります。森林総合研究所におけるいままでの試験研究によると,我が国の自然条件に適した低価格で性能のよい材料は黒色系のポリエチレンフィルムです。また,雑草木の高さなどにもよりますが,通常一辺が1メートル前後の正方形シートを,4隅及び苗木の根元付近の計5か所で,鋼鉄製のピンにより地上に固定すればよいことが分かりました。環境への影響については,ポリエチレン自体は太陽光線での分解によって,ほとんど無毒化されますが,野生動物が誤食する可能性や防止策について,検討する必要があります。これらのことを考慮しながら,マルチの設置作業を省力するための手動装置や,機械装置による抜本的な下刈省力を目指して研究開発を進めています。

企画・制作:林業機械研究領域 研究の“森”から No.98 平成13年10月31日発行
編集・発行:森林総合研究所企画調整部研究情報科広報係
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