ロゴ FFPRI
独立行政法人
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル 研森イメージ
第99号
平成13年12月28日発行
目次一覧へ>
 

表面改質して

紫外線や水,汚れから木材を守る


木材表面の劣化

 自然景観との調和や,高齢化社会を迎え安全で快適な住生活への強い関心から,木橋,遊具,外壁,デッキ,窓枠などの屋外や,手摺り,壁,フローリングなど屋内で木材を使いたいという人が増えています。しかし,木材は屋外では雨,光(特に紫外線),菌類,塵埃,大気汚染物質などにより割れ,変色,風化などの劣化(写真1)を生じ,屋内では水や埃,人の手垢などによるシミや汚れを生じます。

 屋外で,雨が当たったり,湿度が変化したりすると木材は膨潤,収縮を引き起こします。これが繰り返し起こると表面に割れや反りが発生します。太陽光のうちエネルギーの大きい紫外線はポリフェノール類などの抽出成分やリグニンなど木材中の芳香族成分を分解して,変色,さらには風化を引き起こします。また適度の温度,水分,栄養があるとき,木材表面にカビが発生し,変色を生じます。一方,屋内では,水が付くとシミができたり,繰り返し触ると汚れが付いたりします。

写真1 表面改質木材の屋外曝露実験

写真1. 表面改質木材の屋外曝露試験

 

表面の化学改質による耐候性の付与

 木材表面を化学改質して上記のような劣化の原因を抑えることにより木材の耐候性の向上を図ることができます。木材をアセチル化すると耐水性,寸法安定性が付与されます。木材にポリエチレングリコール(PEG)を含浸すると木材の光分解が低減されます。これらを組み合わせて表面を処理した後塗装した木材を屋外に曝露したときの色差(ΔE*)を図1に,塗膜の割れや剥がれなどの表面欠陥の割合の変化を図2に示します。いずれも大きく改善され,耐候性が向上したことが分かります。

 また,新たに合成した反応性紫外線吸収剤(UVA)を木材単板表面にグラフト(直接化学結合)し,屋外曝露したときの重量減少率を図3に示します。グラフト処理した単板の重量減少が小さくなり,木材の光分解が低減したことが分かります。

図1 表面化学改質木材の屋外曝露における色差変化

図1. 表面化学改質木材の屋外曝露における色差変化

A30:アセチル化30分,A60:アセチル化60分,PEG:PEG処理

図2 表面化学改質木材の屋外曝露における塗膜欠陥

図2. 表面化学改質木材の屋外曝露における塗膜欠陥

図3 紫外線吸収剤グラフト処理単板の耐候性

図3.紫外線吸収剤グラフト処理単板の耐候性

 

表面のプラズマ処理による撥水性,防汚性の付与

 10−2〜10mmHgの低圧下の気体に数十Wの電気を放電させてできるプラズマ状態の中に材料を置くと,その表面を改質することができます。気体の種類を変えることにより種々の性質の表面を作り出すことができます。木材の持っている吸放湿性,触感性などの性質を生かしたまま,表面のみを改質することができます。

 アルゴンガス中でプラズマ処理を行って木材表面を活性化させた後,親水性のアクリルアミドと疎水性のフッ素アクリレートのグラフト共重合を行いました。その表面をXPS(X線光電子分光分析)装置により分析した結果を図4に示します。フッ素(F)の比率(図4縦軸:F/C)が高いほど疎水性であることを示します。Fの比率を変える(図4横軸)ことによって,撥水表面や汚染の洗浄性能の高い親水性表面を作り出すことができます。

図4 アクリルアミド/Fアクリレートグラフト共重合化木材表面の元素組成

図4.アクリルアミド/Fアクリレートグラフト共重合化木材表面の元素組成

   F:フッ素,O:酸素,N:窒素,C:炭素

 

人と環境にやさしい自然塗料

 表面に塗膜を作って,水や汚れから木を保護し,美観を高めるために塗装をします。現在使われている塗料のほとんどは合成樹脂塗料です。これらは塗料の製造の過程でエネルギーを多く消費したり,溶剤がVOC(揮発性有機化合物)として環境汚染やシックハウスの原因となったり,廃棄しても分解しなかったり,燃焼させたとき環境汚染物質を排出するなど,環境や人の健康に負荷を与えるものがあります。

表1.自然塗料の原材料

表1 自然塗料の原材料

 これらへの配慮から表1に示したような天然物のみを原料に使った自然塗料が開発されました。すべて天然物が使われているので,製造時や廃棄したときに環境への負荷が小さく,人に優しいとされています。しかし,自然塗料を塗布した木材表面の性能を試験すると,合成樹脂塗料に比べ性能が劣っており,塗りにくい,乾きが遅い,耐久性が低くメンテナンスが必要であるなどいろいろな短所があります。このような点を十分に承知した上で自然塗料を使うことが大切です。

企画・制作:木材改質研究領域 研究の“森”から No.99 平成13年12月28日発行
編集・発行:森林総合研究所企画調整部研究情報科広報係
〒305-8687 茨城県稲敷郡茎崎町松の里1
Tel.0298-73-3211(内線227),Fax.0298-74-8507
E-mail:kouho@ffpri.affrc.go.jp URL:http://www.ffpri.affrc.go.jp/

目次一覧