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独立行政法人
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル 研森イメージ
第117号
平成15年10月30日発行
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土砂流出を抑える保護樹帯
−半島マレーシアの伐採地における一例−

  赤茶色に濁って蛇行する大河が、熱帯林の中を流れている映像を見たことがある方は多いと思います。森林の伐採に伴い、大量の土砂が河川に流入することは広く知られていますが、徐々に土砂流出対策がとられるようになってきました。今回は、実際に森林が伐採された、半島マレーシアの小流域(ブキタレ流域試験地)における保護樹帯の土砂流出抑制効果について紹介したいと思います。

図1 伐採前後の斜面の変化森林伐採によって地面の様子はどう変わる?
  森林では、地表面は落葉層に覆われ、その下はA層と呼ばれる腐植に富み孔隙が多い土となっています。A層がこの孔隙によって水を浸透させるため、森林では大雨が降っても土砂流出はほとんど起こりません(図1上)。森林を伐採すると、雨滴が直接地表面に当たるようになり、土壌表面を保護していた落葉層は急激に分解されてなくなり、A層が露出するようになります。このような状態になると、強い雨にたたかれて土壌粒子が飛散し、侵食を受けるようになります。また、伐採した木を運び出すために斜面を切り開いて作った林道や集材路では、土砂が道路の下に捨てられることが多く、一旦雨が降ると濁水の発生源となります(図1下,写真1)。このように、森林伐採前後で斜面は全く異なる様相を呈します。写真1 集材路と流出土砂











ちょっとした工夫−河道沿いの保護樹帯
  このように伐採のため林道や集材路を開設すると、土壌侵食や土砂流亡が発生しやすくなりますが、土砂の河川への流入を抑制する方法があります。それは斜面の一番下、河道沿いの森林だけは伐らずに残して保護樹帯とし、林道や集材路からの土砂をそこで捕捉しようとするものです。ブキタレ流域試験地では、河道の両岸にそれぞれ幅20mの保護樹帯が設置されており、その一部で地表面における流出土砂の堆積・侵食量を測定しました。

保護樹帯における堆積・侵食量の測定
  堆積・侵食量の測定は、市販のステンレス製バーベキュー串に黄色のビニールテープを2カ所巻いて固定した侵食ピンを用いて行いました(図2)。この方法を用いると、多点における地表面の土砂の堆積・侵食状況を簡単に測定することができます。保護樹帯内の堆積・侵食量の測定結果の一例を図3に示します。右岸側・左岸側ともに堆積量の多い地点がありましたが(矢印のライン上)、河道沿いには堆積量の多い地点は認められませんでした。保護樹帯内の同一ライン上における斜面上方の土砂の堆積と、斜面下方の地表面の様子を写真2に示します。

図2 浸食ピン測定法 図3 保護樹帯内の堆積・侵食量 写真2 保護樹帯の土砂捕捉効果

保護樹帯の土砂捕捉効果図4 保護樹帯内の堆積量の減少
  図3に赤い矢印で示したラインの模式的な断面図を図4に示します。堆積・侵食量は矢印の長さで示してあります。集材路から流出した土砂が保護樹帯内に入り、斜面下方に行くにしたがって堆積量が減少し、河道付近ではほとんど土砂の堆積は生じていません。このように、幅20mの保護樹帯でも、斜面上方の伐採地や集材路からの流出土砂を捕捉する効果が相当大きいことがわかりました。

<実行課題>オア2b2
荒廃熱帯林のランドスケープレベルでのリハビリテーションに関する研究
大貫靖浩(立地環境研究領域)
野口正二(国際農林水産業研究センター)
佐々木尚三(北海道支所)
研究の森から第117号平成15年10月30日発行
編集発行:森林総合研究所企画調整部研究情報科広報係
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