ISSN  1348-9798
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独立行政法人
森林総合研究所
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第120号
平成16年1月30日発行
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「樹木を化学の目で観る」
−リグニン・セルロース間の結合点−

「樹木に含まれる主要化学成分」
  樹木は数多くの化学成分が集まってできていますが、この中の「セルロース」「リグニン」「ヘミセルロース」は主要化学成分と呼ばれ、樹木の幹部分では、この3つが全成分の約95%を占めています。セルロースは、主に細胞の二次壁部分(細胞壁の主要部分)に存在し、樹木を支える役割を果たしています。リグニンは、特に細胞間に高濃度で存在し、細胞壁と細胞壁をくっつける役割を果たしています。ヘミセルロースは、セルロースと同様に、主に二次壁部分に存在するのですが、その役割についてはよくわかっていません。樹木を人間の体に例えると、「セルロース」は骨、「リグニン」は筋肉であり、あえて言えば、「ヘミセルロース」は脂肪でしょうか。


粉末状のセルロースとリグニン
粉末状のセルロース(左)とリグニン(右)
「接する」それとも「くっつく」!!!セルロース化学構造の模式図
  これまでの研究から、セルロースやリグニンは、樹木中できっちりと分かれた状態ではなく、混ざり合い、互いに接する状態で存在することはわかっていました。しかし、この両者は接しているだけなのか、それともくっついている(化学結合している)のかということについては、長い間はっきりさせることができませんでした。

  人体の場合には、骨と筋肉は接する状態で存在していますが、両者は接するだけでなく、腱を通して互いにくっついています。ただし、両者がくっつくのは主に関節の部分であり、それ以外の場所では、接してはいるけれどもくっついてはいません。つまり、骨と筋肉の場合には、ある程度限定された状態・場所でくっついていると言えます。樹木ではどうなっているのでしようか?
リグニン化学構造の模式図
リグニン化学構造の模式図


  今回私達の研究室では、リグニンとセルロース間に化学結合が存在する場合、この結合を切ることなく、木材中から取り出すことのできる単離法を用い、くっつきかたの解析を行いました(図1)。その結果、リグニンとセルロースとが、化学結合していることを示すデータを得ました。つまりリグニンとセルロースは、人体の骨と筋肉の関係と同様に、くっついていることがわかりました。
図1 リグニン・セルロース間化学結合の単離過程
図1.リグニン・セルロース間化学結合の単離過程



「リグニン・セルロースの結合点がわかるとどうなる?
発展が期待される二つの新技術」

その(1)
  リグニン・セルロース間の結合量と、木材の物理強度の間には、何らかの相関関係があるのではないかと推定されています。今後この研究がより進めば、建築用途に適した、強度が優れた樹木を作り出すことが可能になるかもしれません。

その(2)
  セルロース、リグニンはともに利用価値の高い素材であり、セルロースは紙やフィルターに、リグニンはバイオマス燃料や化成品原料として利用されています。しかし、樹木から純度の高いセルロースやリグニンを取り出すことは大変難しく、コストがかかりさらに多くの無駄が出てしまいます。しかし、セルロースとリグニンの結合点のみを切ることができるようになれば、これらの問題点を解決することができます。



図1 リグニン・セルロースの結合
図2 リグニン・セルロースの結合

<実行課題>クア1a
リグニン、多糖類等樹木主成分の効率的分離・変換・利用技術の高度化
池田 努、杉元倫子、田中良平、真柄謙吾、加藤 厚、細谷修二 (成分利用研究領域)
 研究の“森”からNo.120号 平成16年1月30日発行
  編集・発行: 森林総合研究所企画調整部研究情報科広報係
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