ISSN  1348-9798
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独立行政法人
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル 研森イメージ
第125号
平成16年6月30日発行
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収穫されても植林されない森林とはどんなところ
−簡易なモデルで再造林放棄地の発生を特定−

九州地方の山地では・・・
  九州地方は、温暖多雨な気候のおかげで林木の成長が旺盛なため、林業生産活動が盛んで(写真1)、例えばわが国の林業生産で最も一般的なスギは、全国生産量の35%が九州産材です。主要なものにはスギのほかにヒノキもあり、どちらも住宅などの建築用をはじめ身近な品々の重要な材料として活用されています(写真2)。

写真1 九州地方の山地に広がる人工林
写真1.九州地方の山地に広がる人工林。


写真2 人工林から収穫され製材所で加工され出荷を待つ製材品
写真2.人工林から収穫され製材所で加工
され出荷を待つ製材品。


  人工林では木を伐って木材を収穫したらすぐに植林をする(これを、再造林するといいます)ことが前提ですが、近年、木を伐っても植林しないケースが増加しています(写真3)。これは九州に限らず全国的な傾向となっていて、林野庁によると伐採後3年以上経過した人工林伐採跡地のうち植林していないものは、現在全国の民有林で約2.5万ha(全体のほぼ2割)にのぼるとされています。
  そうした林地は年々増加しており、立地条件によっては土砂流出・林地崩壊をもたらしたり、持続可能な林業経営を妨げてしまい、地域経済に悪影響を及ぼすなどといった森林の有する多面的機能の発揮に支障を来しかねない深刻な問題を投げかけています。


写真3 ある再造林放棄地
写真3.ある再造林放棄地。
再造林される見込みの無かった林地でしたが、
水土保全上等の理由から地元の森林組合に
よって買い取られ再造林されることになりました。

再造林されない林地の隠された姿
  九州の中でも林業活動が盛んな熊本県の協力を得て、2000年までの3年間で民有林のうち再造林された林地688件(以下、再造林地)、再造林されない林地804件(以下、再造林放棄地)の計1,492のデータを収集し解析しました。

  再造林の実施に関係があるといわれている要因別に傾向をみると、傾斜が急になるほど、林道からの距離が遠くなるほど、再造林率が低くなっていることがわかります(図1上・中)。同様に、標高が高くなるほど、森林所有者が遠方に在住するほど、再造林されない傾向がうかがえます。
  一方、図1下に示すように地位級※1が高いほど再造林されないという意外な傾向がみられました。地位級が高い林地では短期間で良好な成長が期待でき、収穫できるわけですから、むしろ再造林される可能性が増すはずです。この謎を解くため解析を進めた結果、今回の調査地域では高い地位級の林地は傾斜の急なところに多かったということがわかりました。所有者の目は、地位の良し悪しよりも、斜面が緩いか急かの方に向いているということになるようです。
図1 収穫された後に、再造林された件数の割合
図1.収穫された後に、再造林された件数の割合。

※1地位級とは林地の材積生産力の高さを示す指標で、
値が高いほど林木の成長が良いことになります。


図2 再造林放棄地と材造林地の対比で示した、それぞれの要因との関連性
図2.再造林放棄地と再造林地の対比で示した、
それぞれの要因との関連性。

(横棒が長いほど関係が深いことを示します。
グラフ中央を境に横棒が左側に向かうものは
再造林放棄地と、右側に向かえば再造林地と
関係が深いことを示します。)

※2 
所有者不明とは、売買等で把握し切れて
いないことを意味します。




再造林されない林地は、こんなところ!
  再造林という投資を行うわけですから、低コストで高収益を誰しもが望みます。コストヘの影響が大きいと感じられるのか再造林放棄に最も強く作用しているのは傾斜、次いで、所有者が遠方にいるほど山への関心も薄れるといったことからか森林所有者の不在村状態の影響が大きく、これら2要因と比べると残る3つの要因(標高、林道からの距離、地位級)の影響力は小さいということがわかりました。
  したがって、傾斜が急な林地や所有者が同一の市町村に在住していない林地では再造林されない傾向が強いということになります(図2)。

簡易なモデルで、発生の7割を事前に特定
  多くの情報が必要と思われた再造林放棄地の発生特定化も、傾斜と不在村状態という2つの情報だけで数式モデルを作成し検証したところ、データの70.7%までを正しく判定できました。
  森林法という法律によって市町村は、立木の伐採と再造林が市町村森林整備計画に適合するように指導・監督することと定められています。こうした森林管理を担当する行政部局がこの放棄地発生特定モデルを活用すれば、事前に再造林されにくい林地を立木が収穫される前に特定できるので、崩壊等の問題が生じてから対策を講じるよりもスムースに処理できることになるでしょう。
 <実行課題>エウ4a
    人工林流域における林業成立条件の解明
 野田 巌、林 雅秀(九州支所森林資源管理研究グループ)
 研究の“森”から 第125号 平成16年6月30日発行
 編集発行:森林総合研究所企画調整部研究情報科広報係
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