ISSN  1348-9798
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独立行政法人
森林総合研究所
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第127号
平成16年8月31日発行
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地震で起こる山崩れの被害を減らすために
−実験でみる地震時の斜面崩壊の特徴−

地震の時には斜面崩壊が起こる
  人間の生活圏が山地周辺地域に広がっている現在、大規模な地震によって山地斜面が崩れ、家屋や道路はもちろんのこと人命にも大きな被害を与える例が増えています(写真1)。従って被害の軽減のため地震による斜面崩壊の発生機構の研究がますます重要になっています。

写真1 地震で発生した奥尻島の斜面崩壊
写真1.地震で発生した奥尻島の斜面崩壊
(北海道森林管理局提供)


斜面崩壊実験
  斜面は地震により大きく揺れることで、それまで摩擦などによって保ってきた力のバランスが崩れて崩壊を起こします。しかし、こうした崩壊そのものの実態についてはまだよく分かっていません。そこで兵庫県南部地震の時に実際に崩壊した斜面の1/5の大きさの模型斜面(斜面長4m、高さ3m、土層厚1.2m)を地震の再現装置の上に作り、およそ震度6弱に相当する人工的な地震動(図2の上グラフ)を与えて斜面崩壊を起こす実験を行いました(写真2)。
どこが危ないのか?
  斜面に作用する力の様子を調べるため、地震加速度を斜面の表面や内部で計測しました。斜面の土台に与えた地震が斜面を下から上に伝わっていく際、地震加速度は大きく増幅しました。特に斜面上部から平坦面に移る斜面の“肩”部分の表層付近で最も大きくなり、崩壊発生直前には与えた地震加速度の約2倍にも達しました(図1)。このように地震時には斜面上部の表層に近い部分に非常に大きな力が作用し、崩壊の引き金になっていることが分かりました。
    ※地震加速度:地震による振動の速さの変化割合。土が受ける力の大きさは加速度に比例する。
写真2 実験斜面と発生した崩壊
写真2.実験斜面と発生した崩壊  

図1 崩壊発生直前における地震加速度の増幅率の分布
図1.崩壊発生直前における地震加速度の増幅率の分布(■は加速度センサーの位置)
(模型斜面を横から見たもの)

図2 与えた地震加速度と崩壊初期の土塊移動量
図2.与えた地震加速度と崩壊初期の土塊移動量

地震による崩壊はどのような現象か?

  崩壊発生の直前には、地震加速度が大きく増幅した斜面上方の“肩”の付近で多くの亀裂が発生し、その後、これより下の表層部分が塊状となって大きく崩落しました。また崩落中の土塊の移動量は、地震の波に合わせて時間と共に階段状に変化することがわかりました(図2)。こうした土塊の移動特性は速度が連続的に増加する降雨による斜面崩壊のタイプとは全く異なるものでした。

どういう対策に役立つか?

  こうした研究の成果は、地震を原因とする斜面崩壊の被害を防止するため、斜面上で危険な箇所の強度を高める工法などの開発にも利用され、実際に施工もされるようになりました(写真3)。また、コンピュータシミュレーションなどによって、地震による斜面崩壊の危険箇所や被災範囲を予測して被害を軽減するための技術の開発などにも役立っています。
写真3 斜面にネットを被せて崩壊防止効果を高めた構造物の例
写真3.斜面にネットを被せて崩壊防止効果を
高めた構造物の例

※本研究は兵庫県が実施した「森林土木効率化技術開発モデル事業」(林野庁補助事業)の一環で実施したものです。
 <実行課題>イイ2C
  地すべり移動土塊の変形機構の解明

   浅野志穂 松浦純生 岡本降(水土保全研究領域)

 研究の“森”から 第127号 平成16年8月31日発行
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