ISSN  1348-9798
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独立行政法人
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル 研森イメージ
第131号
平成17年2月28日発行
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闇夜にシカの数を推定する

  携帯型GPSレシーバやレーザ距離計、電子コンパスといった機器を使って、これまでのシカの密度推定法の一つを改良しました。

闇夜に光る目
  ニホンジカ(シカ)の数が増え、全国各地で農林業に大きな被害をもたらすようになってきました。夜、道路に飛び出してきたシカに驚かされたという経験をもつ人もいることでしょう。この時、車のヘッドライトに照らされたシカの目がキラリと光っていたことに気がつきましたか。

シカだけでなく・・・
写真 暗闇に光る目(シカ)
タヌキも・・・
写真 暗闇に光る目(タヌキ)
ノネズミも・・・
暗闇に光る目(ノネズミ)


動物の目は強い光が
当たると光るのです。

図 目の構造どうして目が光るの?
  哺乳類の多くは、網膜の外側にある脈絡膜の中に「輝板(タペタム)」という組織を持っており、網膜を透過した光がタペタムに反射して目が光っていたのです。タペタムで反射された光は、視細胞と視神経をもう一度刺激するため、眼に入ってきた弱い光を増幅するはたらきをもっています。目が光るということは、夜目が効くということと密接に関係していたのです。人間の目にはタペタムはありません。ストロボを使って写真を撮った時に目が赤くなることがあるのは、瞳孔の反応が遅れて開いたままになり、網膜の血管が写ってしまうことによります。これは「赤目現象」と呼ばれています。


スポットライトセンサス
写真 スポットライトセンサス2写真 スポットライトセンサス1  シカは日が沈むと牧草地や伐採地など開けた場所に現れて採食をしますので、車で移動しながら周囲をサーチライトで照らすと、シカの目が点々と光るのを見ることができます。100m以上離れたシカを発見することも難しくありません。双眼鏡やバードウォッチングに使う高倍率の望遠鏡を使えば、発見したシカがオスなのかメスなのか、オトナなのかコドモなのかを識別することもできます。この方法は、スポットライトセンサス法と呼ばれ 国の内外を問わずシカの動向を調べる方法として広く使われています。
  九州中央山地に固定した調査ルートを設け、四季を通してスポットライトセンサスを行った結果、落葉広葉樹の葉が落ちて見通しのよくなる秋に調査を行うのが最もよいことが分かりました。この季節はシカの繁殖期にあたり、普段は警戒心の強いオスも発見しやすくなるからです。

距離標本法
  適した季節に調査をしたとしても、すべてのシカを見落とすことなく数えることは不可能です。これまでは、発見したシカの総数を個体数の変動を示す指標として用いてきましたが、やはり見落としを考えないわけにはいきません。そこで「距離標本法」という方法を使って、見落とし率を考慮しながら生息密度を推定しました。距離標本法は、調査ルートから遠く離れるにしたがってシカの見落とし率が高くなると仮定し、距離別のシカの発見頻度に関数をあてはめ全体の数を推定する方法です。シカだけでなく、さまざまな哺乳類や鳥類の調査にも利用されています。距離標本法では、発見したシカの位置を測量し、調査ルートまでの「最短距離」を正確に計ることが重要です。これまではシカまでの距離は目測に頼っていたために、最短距離が大ざっぱにしか測定できないという問題がありました。このため、GPSレシーバを使って発見場所を緯度、経度で記録し、周囲の磁気の影響を受けにくい電子コンパスを使って発見方位を測定し、レーザ距離計でシカまでの距離を測定しました。これらの計測値を使ってシカの位置をコンピュータのデジタルマップ上に表し、調査ルートまでの最短距離を測定しました。こうした改良の結果、安定した精度でシカの密度を推定することができるようになりました。

シカの位置を測定し、調査ルートまでの最短距離を求めます
シカの位置を測定し、最短距離を求める

最短距離をもとに、発見確率を計算して密度を推定します
最短距離をもとに、発見確立を計算(密度椎定)1 グラフ シカの密度 毎年同じ時期に調査を行うことにより、シカの個体数をモニタリングできるようになります。

 <実行課題> ウア4a
   ニホンジカの密度管理技術の開発と植生への影響

     小泉 透、矢部恒晶(九州支所)


 研究の“森”から 第131号 平成17年2月28日発行
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