ISSN  1348-9798
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独立行政法人
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル 研森イメージ
第135号
平成17年4月28日発行
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外来種に追われる希少な野生生物
−奄美大島でのアマミノクロウサギと固有鳥類の場合−



希少種の宝庫

  南西諸島は世界的に珍しい動植物が多く、とりわけ沖縄本島北部と奄美大島の森林には固有種が多く生息しています。そのなかで、奄美大島に生息する代表的な固有動物は、アマミノクロウサギやルリカケス、アカヒゲなどの鳥類が挙げられます。一方、1990年代に入って急速に分布域を拡大したとされる外来種のジャワマングースがこれらの固有種の存続を脅かしていると指摘されています。そこで、その影響を明らかにし、マングースをコントロールすることの重要性を訴えることが急務となっています。


マングースの分布拡大

  奄美大島は鹿児島県の南部、南西諸島の北東部に位置します。マングースはハブを駆除する目的で放逐され、1979年以降に定着したと推定されています。その分布域は年約1kmほどの速度で周辺に拡大し(図1)、今ではほぼ全島にわたって生息が確認されています。環境省では1990年代後半から、マングースの調査や駆除事業を行ってきましたが、その結果、図1に黄色で示した地域ではマングースが高密度で生息し、それ以外の地域では比較的低密度であることがわかっています。
図1 奄美大島の位置とマングースの分布拡大
図1 奄美大島の位置とマングースの分布拡大
調査の方法
  森林総合研究所では、マングースの分布拡大が確認されている地域で、アマミノクロウサギと鳥類の生息数の変化を調査し、マングースの生息密度との関係を解析してきました。まず、1990年代後半以降、マングースが急に増えた地域と密度が低い地域で、1990年代前半と2001年以降の調査結果を比較しました。現地調査の方法としては、鳥類については、50前後の定点を設定し、種類ごとに観察数を記録しました。また、アマミノクロウサギについては、林道や沢沿いにルートを設定し、ルート上で見つかった糞粒をすべて数えました。


写真1 捕獲されたジャワマングース
写真1 捕獲されたジャワマングース
鳥類及びアマミノクロウサギの生息数の変化とマングースの捕獲密度の関係
  ルリカケスの観察数は、1993年にはマングース高密度域と低密度域で大きな差はありませんでしたが、2001年には高密度域でかなりの減少が見られました(図2)。アカヒゲも同様の傾向が見られます。ルリカケスは冬の間、地上に落ちているシイの実を餌とし、巣立ち前に雛は地上で生活します。

  また、アカヒゲはしばしば地上付近を生活空間として利用します。したがって、マングースがこれらの種を捕食し、生息数を減少させてきた可能性は高いと言えます。これに対し、オーストンオオアカゲラやアマミコゲラは1993年に比べて、2001年には高密度域で観察数の増加が見られました(図2)。これら2種は、地上付近で観察されることがほとんどないので、マングースの影響はあまり受けないと考えられます。

  アマミノクロウサギについては、図3のB〜D(マングース高密度域)とF地域では1993-94年に比べて、2001-03年は大幅に減少しているのに対し、E及びG〜I地域(低密度域)では増加またはわずかな減少というように、両地域の間で明らかな違いが見られました。さらに、マングースの糞を分析した結果、その8%にアマミノクロウサギの体毛が認められたことから、マングースの捕食がアマミノクロウサギの生息頻度に影響を与えている可能性は高いと考えられます。

  ここで取り上げた種のほかにも、アマミヤマシギ、シリケンイモリ、オットンガエルなど、かつて生息数が多かった動物の急激な減少が報告されており、マングースの影響の可能性は否定できません。「外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」施行を控え、マングースの駆除とともに固有種の生息実態調査を行うことが急務であると言えるでしょう。


参考文献
石井信夫(2003)奄美大島のマングース駆除事業−とくに生息数の推定と駆除の効果について. 保全生態学研究、8:73〜82.
杉村乾(2002)奄美大島における鳥類とアマミノクロウサギの生息数の変動傾向と環境変化について. 環境情報科学論文集、16:121〜126.
図2 マングース高密度域と低密度域における鳥類観察数の変化
図2 マングース高密度域と低密度域における
鳥類観察数の変化



図3 マングース放逐点とアマミノクロウサギの糞の観察頻度の変化

図3 マングース放逐点とアマミノクロウサギの
糞の観察頻度の変化

 <実行課題> アウ1c
   南西諸島における森林生物群集の実態と脆弱性要因の解明

     杉村乾(研究情報科)
     山田文雄(野生動物研究領域)
     佐橋憲生(九州支所)

 研究の“森”から 第135号 平成17年4月28日発行
 編集発行:森林総合研究所企画調整部研究情報科広報係
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