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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.66
1998.07.31

水源地域を守るために

−平6(1994)渇水のもたらしたもの−

はじめに

 近年,水源林の適正な管理と水源地域の持続的な発展のための方策が求められています。しかし,森林のもつ水源涵養機能などのいわゆる公益的機能については,その評価が難しく,そのため,これらにかかる費用が適正に負担されているとはいえません。一方,水源地域である上流部では,基幹産業である林業・林産業の不振や過疎化の進行,市町村財政の悪化などにより森林の管理が十分行えない場合が出ています。したがって,水源涵養機能等の評価方法を確立すると共に,現段階で最も望ましい水源林維持・管理費用の負担形態を明らかにすることが重要です。

 そのため四国支所では,上流地域の森林管理費用の負担に関する基礎資料を整備するために,平6渇水の経過を記録するとともに,これを契機として上流地域の水源林の維持・管理に関する下流域住民の意識がどのように変化したのか,そして現時点での下流域と上流水源地域との水源林を巡る交流にはどのような特徴がみられるのかを調べました。

写真 平成6年の渇水で湖底から姿を現した旧大川村役場

写真 平成6年の渇水で湖底から姿を現した旧大川村役場

図 吉野川水系、石手川水系の渇水の経過

図 吉野川水系,石手川水系の渇水の経過

 

渇水の経過と水源林を巡る動き

 まず,この渇水の経過ですが,前図のように「四国の水瓶」といわれる吉野川水系の早明浦ダム,石手川水系の石手川ダムなどで貯水量が0になるなど各河川の渇水は深刻で,多くの市町村で産業や市民生活に大きな支障を来たしました。例えば香川県では,6月29日に始まった早明浦ダムからの香川用水の取水制限は11月14日までの,延べ128日間にもおよび,5市23町,香川県内の給水人口の約80%が影響を受けました。

表 平6渇水以降の水源林などへの関心の高まり(平成9年上半期まで)

表 平6渇水以降の水源林などへの関心の高まり(平成9年上半期まで)

 しかし,この渇水を契機に下流地域に住む人々が,上流の水源地域へと目を向け始めたのも事実です。右の表は平6渇水以降,四国地方でみられた水源林や水源地域を巡る動きをまとめたものです。これをみると,まず,平6渇水以降,水源林や水源地域を守っていこうという気運が高まっていることが分かります。次に,活動の内容ですが,最も多いのが下流域の市民等がボランティアなどで上流の水源地域に植樹などを行う森林整備活動,次いで水源林整備費用の寄付,そして啓蒙・普及活動,交流活動などとなっていますが,市町村等による水源林の購入や水源林の維持・管理のための基金設立等,いわゆる公的資金の導入はそれほど多くはみられません。

今後の課題

 このような水源林や水源地域を守る活動を一部の人たちの「善意」だけに任せておけばよいというわけにはいきません。なぜなら,水を使うことにより得られる利益(効用)は,ある水源地域の水を利用するすべての人々に分かち合われるものであり,その中で「払う人」と「払わない人」が出てきてしまったら不公平になるからです。今後,上記の結果を踏まえ,現時点での水源林の維持・管理や水源地域の持続的発展のための費用の適正な負担形態について研究を進めていきたいと考えています。

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