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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.35
1995.03.22

里 山 が タ ケ に 占 領 さ れ る ?


モウソウチクの履歴...
モウソウチクの履歴1
モウソウチクの履歴2
タケノコが増えるのはいいけれど...
 ニホンで最も普通にみられるタケ,ふだん口にするタケノコはモウソウチク です。モウソウチクは1700年代に中国から渡来した帰化植物なのですが,タ ケノコ栽培のために,西日本各地に広く植裁されました。近年は,輸入タケ ノコなどにおされて多くのタケノコ畑は放置され,また宅地やゴルフ場など の造成で竹林は減少していると考えられていました。ところが,最近の研究 で,人での入らなくなった竹林は,自然に分布を拡げていることが分かった のです。

 上の図では,京都府の山城町と田辺町の三十数年間の竹林分布の 変化で,明らかに面積が増加しています。そのうち1970年頃までは,まだ人 手によって植えられていたことが多いようですが,それ以後は地下茎を伸ば して周囲の雑木林に侵入し,自然に分布を拡げていると考えられます。

スギの造林地に侵入するモウソウチク

スギの造林地に侵入するモウソウチク (写真中央の,色の淡い部分がモウソウチク)
 それでは,モウソウチクがどのように森林に侵入しているのでしょうか? 京都府南部でタケが活発に分布を拡げている場所で調査してみると,この地域 では森林の樹高が低く,タケの樹冠が広葉樹の樹冠よりも高い位置にあること が分かります(下図を参照)。

これがモウソウチクの侵入現場だ!

 一般に森林の中で広葉樹が大きくなるには長い時間が必要ですが,モウソ ウチクはタケノコの伸長という形でほんの数か月で他の広葉樹よりも高い場所 に葉を展開することができます。このような性質の違いからタケと広葉樹が混 生している場所では,光をめぐる競争という点で圧倒的にタケが有利で,多く の広葉樹が枯死していました。また,すでにタケが優先している場所では広葉 樹の稚樹は生育できないようです。

 このような有利な性質を維持するためにモウソウチクは光合成産物のかなりの 部分を根茎の更新や維持に割り振っているということも分かってきました。

 このような竹林の拡大は,西日本各地の里山で観察されています。確かに, 美味しいタケノコが食べられるのはいいのですが,単純に喜んでばかりはいら れません。周囲の雑木林に生育・生息する貴重な動植物が絶滅することを危惧 する声もあります。上段の写真のように,スギやヒノキの植林地にタケが侵入 して,造林木を枯らしてしまう例も見つかっています。今後は,分布拡大の詳 細な把握や将来の予測を行い,周囲の生態系との調和をはかるための調査・研 究を進める必要があります。
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