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発行:農林水産省林野庁
森林総合研究所
研究の“森”から タイトル No.36
1995.05.22

スギ・ヒノキの大敵

− ニホンキバチの生態とその防除法 −

☆星型模様にご注意!☆

 スギの木を伐ったとき,その木口に写真1のような星型の模様をみかけた ことはありませんか?これは材の中に入ったアミロステリウムという菌が起こ した変色です。このような変色がある材は取引の上では当然嫌われれ,材価が 大変低くなってしまうことは,改めて述べるまでもないでしよう。それではこ の菌はどのようにして材の中にはいったのでしようか。

写真1 スギ木口に現れた星型変色

写真1. スギ木口に現れた星型変色

☆菌を持ち込む犯人☆

 ニホンキバチ(=日本樹蜂)は日本全国に分布し,幼虫がスギやヒノキの材を 食べて生活しているハチの一種です(写真2)。ハチといってもスズメバチの ように人を刺すようなことはありません。菌を持ち込む犯人は,このハチの雌 なのです。幹表面にとまった雌は,産卵管を材の中まで挿入して卵をうみつけ ますが,このときに卵だけでなく菌も一緒にうえつけてしまうのです。ここか ら菌がひろがって,材に変色を起こします。幹の周囲に何か所も産卵されると, 変色帯がたくさんできて,木を伐ったときに星のような模様となって目にみえ てくるわけです。

写真2 産卵中のニホンキバチ
写真2. 産卵中のニホンキバチ

 

☆犯人の素性☆

 ニホンキパチの成虫は,高知付近では真夏をピークとして6〜10月ごろまで 材から脱出してきます。脱出した雌はすぐに産卵しますが,ひとつの産卵孔に は平均2〜3卵が産みこまれます。成虫の寿命は短く1週間程度です。幼虫が 材を食べる長さは8cm程度と短いため,幼虫による食害は,密度が低い場合そ れほど問題にはなりません。外部から卵や幼虫は見えませんので,衰弱木や被 圧木を伐倒して,星型変色の有無を確認することが被害を早期にみつける最良 の手段です。労働力不足と間伐材の価格低迷から,最近では『伐り捨て間伐』 が増えてきました。また,根元を長く伐り残す『高伐り』もよく行われます。 かつては被圧された弱った木で細々と生活していたと考えられるニホンキバチ ですが,伐り捨てられた大量の間伐材や伐り株が恰好の繁殖源となって,この 虫の数を増加させたのです。樹勢のよい木では,幼虫は生存できないと考えら れています。でも成虫はどのような木でもおかまいなく産卵します。産卵され れぱ変色は生じますので,残された健全木に被者が出ることになります。おま けに雌は交尾しなくても産卵できますので始末におえません。

☆匂いで集める☆

 このような特徴をもったニホンキバチに対しては,特に数が増える間伐直後の 成虫数を減らす方法を考え出す必要があります。いろいろな防除法が試される 中で,マツノマダラカミキリの誘引剤として開発された『ホドロン』が,ニホ ンキバチをも集める効果が高いことが分かってきました。薬液の入ったビンを, 上部に穴の空いた円筒形の容器に入れ,この周囲に粘着剤,つまり糊を塗った 紙をかぷせたものがキバチトラップです(写真3)。これを林内に吊るしてお くと(写真4),薬剤の匂いに誘われて成虫が飛んてきます。その後の虫の運 命は皆さんお察しのとおり。強力な糊にくっついて,身動きできなくなってし まうというわけです(写真5)。

写真3 キバチトラップのしくみ

写真3. キバチトラップのしくみ
 

写真4 林内に吊されたトラップ

写真4. 林内に吊るされたトラップ
 

写真5 トラップに捕獲されたニホンキバチ

写真5. トラップに捕獲されたニホンキバチ

 もっとも多いトラップでは2週問で1132匹,30m 間隔で吊るされた99個 のトラップの合計で1シーズンに1317匹もの成虫が採れました(表1)。 またトラップの高さを変えて比較したところ,2m の高さで一番多く成虫が捕 獲されました(表2)。実際には,1.5m程度の高さにトラップを設置すれば 十分効果があります。このような方法によってニホンキバチを効率よく防除す ることが可能になってきたわけですが,何事もモトをたださなけれぱ根本的な 解決には至りません。森林施業方法等を一部見直す必要もあるでしょう。

表1.トラップに誘引されたニホンキバチの個体数(1991年6月4日)
(高知県須崎市,25〜32年生ヒノキ林,1990年2月伐り捨て間伐)

表1 トラップに誘引されたニホンキバチの個体数

表2.トラップの高さの違いによるニホンキバチ誘引数


表2 トラップの高さの違いによるニホンキバチ誘引数
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