タイの熱帯季節林における炭素蓄積分布の把握 生産目標に対応した施業技術の向上と機械化による作業技術の体系化担当
生産技術部 物質生産研究室 石塚 森吉森林環境部 立地環境科長 太田 誠一
背景と目的近年の熱帯林の急速な滅少は,炭素の放出源として地球規模の気候変動への影響が懸念されている一方,森林バイオマス(約1/2が炭素量)の正確な把握が困難なために,その炭素収支の見積もりには大きな幅があるのが現状である。また,森林土壌もバイオマスに比較し得る炭素蓄積を持っているが,熱帯林土壌に関する情報は乏しく,各地で調査事例を集積していく必要がある。そのため,比較的森林破壊の進んだタイにテストサイトを設定し,森林タイプ別の土壌炭素量を調べるとともに,森林バイオマスの推定法の検討とその分布図の作成を試みた。
成 果
テストサイトは,カンチャナブリ(混交落葉林と乾性フタバガキ林を主とする地域)とチェンマイ(山地性常緑樹林と乾性フタバガキ林を主とする地域)に設定し,それぞれの森林タイプの成熟林,二次林,伐採跡地など13〜15か所の調査プロットを設け,毎木調査によるバイオマスの推定と土壌炭素の調査(1m深)を行った。これらの調査と既往の文献のデータの解析から,林分の最大樹高(以下林冠高とする)と地上部バイオマスとの間に,落葉樹林(混交落葉林と乾性フタバガキ林)と常緑樹林(山地性常緑樹林と乾性常緑樹林)でそれぞれ異なる相対生長式で表せる関係があることが分かった(図1:タイの落葉樹林と常緑林における林冠高と地上バイオマスの関係;測定したプロットの大きさは約20m×20m〜40m×40m;林冠の高い林分では,プロットサイズが小さいために測定した林分のバイオマスが過大評価になっていると考えられる。なお,落葉広葉樹林には落葉混交林,乾性フタバガキ林を,常緑広葉樹には乾性常緑林,山地性常緑樹林を含む)。これは,調査プロット程度の面積(40m×40m前後)を単位にすれば,林冠高を測定することで地上部バイオマスをおよそ±20%程度の誤差で推定できることを示している。これをもとに,空中写真による林冠区分(個々の樹冠の大きさ,形状や写真の色調,きめなどから判断)とサンプリングによる林冠高の実測値を対比させてテストサイトを林相区分し,地上部バイオマス分布図を作成した(図2:タイ国チェンマイのドイ・プイ-ステープ国立公園周辺における地上部バイオマス分布図)。これは衛星データを用いたバイオマス推定に利用されるものである。
一方,チェンマイの上壌炭素量を見ると,乾性フタバガキ林(41〜69トン/ha)が最も低く,最大は山地性常緑樹林(151〜321トン/ha)で,混交落葉林(108〜120トン/ha)と乾性常緑樹林(91トン/ha)はその中間であった。しかし,母材の異なるカンチャナブリ(石灰岩地帯)では乾性フタバガキ林,混交落葉林ともにチェンマイ(母材は花崗岩)に比べかなり大きな値を示した。今後は,土壌炭素量に及ぼす母材の影響を明らかにする必要があると考えられる。また,地上部と地下部を合わせた(根を含む)成熟林の炭素蓄積量は,地域によっても異なるが,おおまかに150-350トン/ha(落葉樹林)〜300-500トン/ha(常緑樹林)と見積もられた。
なお,本研究は科学技術庁科学技術振興調整費国際共同研究(多国間型)「地球科学技術研究のための基礎的データセット作成研究」による。
森林総合研究所 平成9年度 研究成果選集
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