ブキットバンキライ(インドネシア東カリマンタン)のカミキリムシ画像データベース

カミキリムシ類は主に樹木を餌とする昆虫です。様々な有用樹木を加害するために、害虫として防除の対象となっている一方、倒木や枯死木の分解を促進したり、花粉媒介を行うことによって植物の繁殖に役立っている例も知られています。このようにカミキリムシ類はいろいろな点で代表的な森林昆虫と言えます。

カミキリムシ類は世界から約35,000種が知られています。しかし未記載の種が数多く残されており、生物多様性の宝庫である熱帯アジアに位置するインドネシアについても、いったい何種のカミキリムシがいるのか、正確には分かっていません。インドネシア最大の島であるカリマンタン(ボルネオ)島には約4,000種がいると推定されています。生息する種は島ごとに異なり、とくに生物地理学上の有名な境界線であるウォーレス線の東西では共通種はごくわずかしかいません。たとえばこのデータベースの対象である東カリマンタン低地と、その東のスラウェシ島とでは共通種率は約5%にすぎません。インドネシアにはその他にもジャワ島、スマトラ島、ニューギニア島(西半分)という大きな島があり、他にもマルク諸島やチモール諸島など多数の島嶼があります。アメリカのカミキリ学者Gressittが、パプアニューギニア(ニューギニア島の西半分)のカミキリムシ類が約4000種と述べていることなども考え合わせると、インドネシアには10,000種以上のカミキリムシ類が分布していると推定されます。
インドネシアと調査地のブキットバンキライ周辺の地図。赤い点線はウォーレス線。

カミキリムシ類は上記のように樹木に依存するので、森林環境を非常によく反映する昆虫です。そのため、比較的狭い地域のカミキリムシのインベントリーをまとめることにより、その地域の森林環境を推し量ることができます。このデータベースに納めた約470種のカミキリムシは、東カリマンタン、ブキットバンキライの森林(面積は1,500ha)のごく一部、約300haで得られたものです。ブキットバンキライは海抜約100mで、東カリマンタン低地林で天然林が残っている数少ない地域であり、調査も1999〜2001年の短期にすぎません。ですからブキットバンキライには、これよりはるかに多くの種、おそらくは倍程度の種のカミキリムシがいると予想されます。このようにこのデータベースは決して完全なものではありません。しかし、インドネシアに残された貴重な天然林のインベントリーとして、今後の熱帯林の多様性研究に役立つものと考え公開いたします。なおこの調査は、JICA(国際協力機構)の熱帯降雨林研究計画の一環として、森林総合研究所がインドネシア科学院(LIPI)、およびMulawaruman大学の協力のもとに行ったものです。また、種の同定に際してゴマフカミキリ類については山迫淳介博士(東京大学)と、ヒメカミキリ類については Dr. Y.Yokoi(ドイツ在住)のお手を煩わせたことをここに厚くお礼申し上げます。

以下の文献には本データベースに掲載された以外の種が多数収録されており、インドネシアのカミキリムシ相を知る上で役立ちます。
1)槇原 寛・WORO A. NOERDJITO1 (2004) ギルモア博士同定、ボゴール動物博物館所蔵のインドネシア産カミキリムシ標本
http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/kanko/390-7.pdf(24MB)
2)槇原 寛・WORO A. NOERDJITO・ SUGIARTO (2002) インドネシア、ジャワ西部のグヌン・ハリムーン国立公園で1997 − 2002年に捕獲されたカミキリムシ類
https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/kanko/384-4.pdf(14MB)


採集法
アルトカルプスの枝を利用した餌木を利用した餌木トラップ゚ 誘引剤(エタノール)を利用したトラップ
マレーズトラップ ライトトラップ

ブキットバンキライの森林
ブキットバンキライの熱帯林 樹冠部に作られた地上高30mのキャノピーブリッジ