植物社会学ルルベデータベースに基づく植物分布図(PRDBマップ)

PRDBマップ(PRDB maps)は、植物社会学ルルベデータベース(Phytosociological Releve Database,PRDB)を用いて作成した日本全国の三面分布図である。日本の植物の分布図はいくつか公表されているが、堀川(1963)だけが平面地図上の分布(水平分布)に加えて、南北・東西の断面図上の分布(垂直分布)を示すことにより、植物の分布域をリアルに表現している(垰田, 1976)。PRDBマップは、現地調査による植生調査データに基づいているため、生育地の位置情報だけでなく、群落内の優占度、共存種の存在などの情報を加味した分布域を表示することが可能である。全国地図では、堀川(1972、1976)の分布図の2倍の空間解像度で表現しているが、さらに詳細な図を描画することが可能である。

今回、ウェブ上に公開するPRDBマップは、引用するだけで自由に利用していただける(ただし、商用利用の場合は許可申請必要)。 PRDBマップの空間解像度は、日本工業規格(JIS X 0410:1976, 2002)で規定された「地域メッシュコード」の2次区画(約10㎞×10㎞)、垂直面では100mである。PRDBに含まれるルルベ(植生調査プロット)データから抽出された対象種の地理的位置(メッシュコードと標高)と優占度(被度)を用いて、地図上に分布地点を描画している。対象種の優占度が4以上の植生調査プロット地点を優占林分(草原の場合は植分)、優占度度3以下の場合を存在する林分として表示している。

マップのデータソースであるPRDB(http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/prdb/)は、オリジナル調査データと既存文献情報を研究目的でデータベース化したもので、植生調査された植物群落の位置情報、生育する植物名と優占度級が記録されている。原論文の著作権のため、生データの一般公開はしていない。これまでに、全国で実施された植物社会学的調査法による植生調査データ39,287点(2011年)がまとめられている。位置情報については、文献に記載されている地図・地名・標高・地形などと国土地理院の地図を照合して、できるだけ高い精度の地域メッシュコード(Grid Square Code)を付与している。 分布図を作成する際、分布に疑問のもたれる地点(疑問地点)が必ず発生する。疑問地点の原因としては、原調査・植物標本・文献のデータ自身の誤りの場合や、文献からのマップ化する際の誤作業の場合などが想定される。ここに掲載するPRDB マップでは、作成者の判断に基づき、疑問地点は削除してある。疑問地点の分布の真偽の確認とデータベースの修正は多くの作業を必要とするため将来の課題としたい。

◆引用文献
堀川芳雄.1963.地球植物学における三面法と潜在分布域の意義.ヒコビア 3: 165-168.
Horikawa, Y. 1972. Atlas of the Japanese Flora, an introduction to plant sociology of East Asia. pp. 1-500.
  Gakken Co., Ltd. Tokyo
Horikawa, Y. 1976. Atlas of the Japanese Flora II, an introduction to plant sociology of East Asia. pp. 501-862.
  Gakken Co., Ltd. Tokyo
垰田宏. 1976. 新刊紹介 ○日本植物分布図譜Ⅱ. 日本林学会誌 58(11): 429

分布図索引

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トップページに戻る     最終更新:2019.07.04