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概要                     

         


歴史


1917
年(大正6
311日 農商務省山林局 (現 農林水産省林野庁)林業試験場 十日町森林測候所 として設立

1936年(昭和11年)十日町森林治水試験地に改名

1950年(昭和25年)十日町試験地に改名

1988年(昭和63年)森林総合研究所 十日町試験地に改名

2001年(平成13年)農林水産省から分離し、独立行政法人 森林総合研究所 十日町試験地となる

2015年(平成27年)国立研究開発法人 森林総合研究所 十日町試験地 に改名


2017年(平成29年)国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 十日町試験地 に改名

組織

国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所は、森林・林業・林産業にかかわる研究と育種事業を行う機関である。本所は茨城県つくば市の筑波研究学園都市にあり、出先として5つの支所(北海道・東北・関西・四国・九州)、多摩森林科学園(八王子市)、林木育種センター、4つの林木育種センター育種場(北海道、東北、関西、九州)、森林バイオ研究センターがある。
十日町試験地の所在地は新潟県十日町市であるが、組織としては本所の森林研究部門 森林防災研究領域に所属する。


所在地

 わが国有数の豪雪地・新潟県十日町市に位置する当試験地は、雪と森林に関わる研究を行う試験地として位置づけられている。現在は主に、雪崩の予知・防止、および森林と融雪・水循環に関する研究 が進められている。常勤職員は研究員3名のみ、敷地面積1.35ha(庁舎延208m3)の小さな試験地で、信濃川を見おろす小高い河岸段丘の上にある(北緯3708´、東経13846´、海抜200m)。





現在の十日町試験地 庁舎
1991年建て替えの庁舎は2階建てで3mまで雪下ろし不要。





冬の旧庁舎
平屋造りのため、雪下ろしが大変。冬の庁舎屋の中は暗かった。





春の旧庁舎
1991年に建て替えられる前の写真。



試験研究の動向と沿革

 明治 時代末期の19071910年にかけて毎年全国各地 で大水害が発生し、政府はその対策として1911 年から第1期治水事業を開始した。この事業に伴い、農商務省山林局(現農林水産省林野 庁)は中央気象台(現気象庁)の協力の下、全国の主要河川に沿って39 箇所の森林測候所を設置した。これは、当時の気象観 測施設が主に都市域に偏在しており、水害の防止・軽減のためには河川上流域での気象観測を充実させる必要があったためである。森林測候所の業務は山岳地帯 の気象、特に降水量の観測・調査を行い、それらを基に河川の下流域に洪水情報を提供することであり、その事務は林業試験場(現森林総合研究所)が執り行う ものとされた。
 十日町試験地は、このような時 代背景の下で1917年(大正6年)林業試験場十日町森林測候所として信濃川中流域に位置する現在の地に開設されたもの である。当初の業務は気象観測のみであったが、1920 年、後に日本雪氷協会(現社団法人日本雪氷学会)初代会長となる平田徳太郎が全国の森林 測候所の責任者となると、業務の1つ に森林の治水並びに水源涵養機能の研究が加えられた。





雪崩防止柵の研究
試験地内の実験斜面に雪崩防止柵 を設置して、柵に加わる力と積雪構造との関係を調査した。研究員が積雪の断面を青色インクで染めて、一降雪ごとに形成される積雪の層構造を浮かび上がらせ る作業を行っている。昭和58年3月11日撮影。






雪食地調査
新潟県小松原国有林の長さ約
300mの斜面で林齢300400年のブナが皆伐された後、積雪のグライドによる地表面浸食(雪食)と雪崩が多発した。その防止策を検討するために、現地調査が行われた。
昭和
54年 撮影




 1934年からは雪質の分類名称 や積雪の変態に関する研究が山形県新庄の積雪地方農村経済調査所からの委託によって行われた。1936年の大雪によって山形県 米沢市付近で積雪に埋もれた桜桃の枝折れが多発し、鉄管や鉄棒が曲がる被害も発生した。しかし、当時この現象(積雪の沈降現象)のメカニズムは未知であっ た。このため積雪地方農村経済調査所が林業試験場に委託してその試験研究が行われ、十日町で主要な実験が行われた。

 な お、1934年4月8日、ストーブの 灰の不始末から出火し、十日町森林測候所は全焼した。しかし、観測資料は持ち出されて焼失をまぬがれ、庁舎は翌年の1115日に再建された。

 1935年に第1期治山事業が終了すると全国の 森林測候所は廃止され、1936年の第2期森林治水事業の開始とともに、そのうちの14箇所が治水事業に直結した試 験研究を行う森林治水試験地に転換した。当試験地の名称も十日町森林治水試験地と改められ、それ以来現在に至るまで、社会的要請の強い森林雪害や雪崩の防 止に関する調査研究が主業務となった。1950年、名称は林業試験場十日町試験地と改められる。1988年に林業試験場は森林総 合研究所と名称を改め、さらに2001年には独立行政法人森林総合研究所 十日町試験地、2015年には国立研究開発法人 森林総合研究所 十日町試験地、2017年には国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 十日町試験地と改名して現在に 至っている。



新潟県中越地震直後の庁舎内
平成16年(2004年)10月23日に発生し、十日町市で震度6強の揺れが観測された。


 2004年10月23日には新潟県中越地震が発生 し、十日町市では震度6強の揺れが観測された。十日町試験地でも本棚やロッカーが倒 れて庁舎内に物が散乱し、実験斜面に亀裂が生じる、観測装置が破損する等、大きな被害が出た。



研究の成果

 1920年代には林内外の積雪の 観測、融雪の研究など水源涵養に関係した研究が行われた。1930年代には、雪質、密度・硬度・引っ張り強度(抗張力)・せん断強度(抗せん力)、含水 量、圧縮性など積雪の物性についての基本的な研究が数多くなされ、その後の雪氷学の発展へとつながっている。さらに1937年、実験斜面での雪崩の 発生を積雪の下から観測するための地下道と周りを雪で囲った恒温室(雪室)が造られる。1938年冬、勝谷稔は雪崩の発生過程を自動記録することに成功し、積雪のグライドやクラックの 発生、積雪移動圧に関する研究が推進される。

 1938年冬からは積雪の沈降力 の研究が開始され、露場に種々の高さの鉄棒を設置してその曲がり具合の測定が行われた。1942年からは、受圧板の高さと形を様々に変えて測定が行われた。これらの研究の結果、積雪の 沈降力は受圧面上に存在する積雪荷重のみによって生じるのではなく、受圧面を中心とした雪冠の重さがあたかも受圧面にふとんを掛けたかのように作用するこ とが明らかになった。

 戦後 は高橋喜平を中心に再び活 発な研究がなされた。実験斜面では、切取り階段工の雪崩防止効果の研究がなされ、群杭工の雪崩防止効果の研究が国鉄と共同で行われた。こうした雪崩防止工 に関する研究成果は、その後1961年から杭施工による雪崩防止林の造成、1971年から雪崩防止柵の研究、1983年からグライド抑制工の開発へと発展し、現場で活用されている。





地下道
地下道(延長約50m)は実験斜面まで伸びてい る。斜面積雪底面の状態を地下から観測できるため、雪崩の研究に活用されてきた。






旧庁舎と実験斜面
左上から右へ旧試験地主任官舎、 旧庁舎、気象・積雪観測露場、実験斜面。実験斜面(傾斜
40°、斜面長40m)では、国鉄鉄道総合研究所と共同で群杭の雪崩防止効果試験が行われている。
昭和
38年 3月19日 撮影。



 北陸地方の豪雪地帯には、雪圧 による樹木の倒伏と薪炭林として短伐期施業が繰り返された結果、根元曲がりのはなはだしい灌木化した低質広葉樹林(ボイ山)が広く分布している。積雪のグ ライドに関する研究は、主としてこのボイ山との関連においてなされ、1968年から若齢林の雪崩防止機能、1983年から雪食荒廃地の発生機構、1987年から埋雪樹木の移動低抗などの研究が実施され、雪崩防止に必要な立木密度について知見 が得られている。
 1950年の冬からは樹木の冠雪 害の研究が始められ、同年冠雪量の自記記録に成功した。これにより冠雪と気象条件との関係の解明が進んだ。1958年からは枝打ちによる冠 雪害の軽減効果に関する実験が行われ、枝打ちにより葉量を1/3減少させると効果が高いことが示された。1983年からは人工冠雪実験手 法の開発が行われた。1984年からはこの手法を用いて、冠雪害抵抗性品種の評価基準を確立する目的で、4品種のスギ について被害形態と抵抗性要因の解析が行われた。






積雪の沈降力の研究
積雪は地表の構造物に布団を掛け たときのように作用し、ガードレールや鉄棒さえ曲げてしまう。これを積雪の沈降力をいう。積雪断面を青色のインクで染めることにより、一降雪ごとに形成さ れる積雪の層構造と設置された梁との関係を可視化してある。
昭和
51年 2月20日 撮影。






スギの保育形式別冠 雪実験
左から右へ標準木(冠雪率
100%)、枝打1/341%)、枝打1/226%)、枝すかし1/364%)、枝すかし1/247%)。昭和37年 1月15日 撮影。






人工冠雪害実験
スギの試料木を人工的に冠雪させ て、冠雪害の研究を行った。パラソルは降雪を避けるためのものである。
昭和
58年 2月23日 撮影。






樹種別冠雪実験
試験地内に5種類の試料木を設置 して、徹夜の冠雪害実験が行われた。向かって左から、スギ、カラマツ、アカマツ、ブナ、モミ。
昭和
58年 1月9日午前5時撮影。



 1987年以降は、遠藤八十一が 中心となって粘性圧縮理論に基づく雪崩の発生に関する研究が行われてきた。積雪の粘性圧縮係数と密度、及びその時間変化の関係が明らかにされ、これに基づ いて降雪強度と雪崩の発生並びに発生時間の関係が求められた。これによる計算結果は過去の雪崩発生事例とよい一致を示した。さらに降水量と積雪の深さの観 測値だけを用いて降雪の深さ(ある時間内に新たに降り積もった雪の深さ)をリアルタイムで推定する装置が開発され、降雪深自動計測システムとして市販され ている。2001年からは湿雪雪崩の危険度評価手法の開発に関する研究が開始され、乾雪に比べて研究が遅 れていた湿雪のデータが蓄積され、湿雪にも適用可能な雪崩発生危険度の評価手法が示された。


1990年以前の研究業績リスト



今後の課題

 雪崩 の研究は社会的に重要であ り、今後とも継続・発展させる必要がある。一方、林地における雪氷は水資源であり、しかも能動的に森林施業を行うことによって融雪の時期を制御することが 可能である。しかし森林と融雪との関係は、観測の困難さから十分な解明がなされていない。

 十日町試験地は、1976年末から1977年の冬季間に気象庁がア メダスに採用する積雪深計を選定する試験会場となり、メーカー数社が参加した。近年においても、積雪・降雪関連の計測機器メーカーとの共同研究を行ってい る。

 十日町試験地は豪雪地に位置す る利点を生かして、今後とも雪崩や融雪に関する研究を推進し、森林・林業政策、雪関連の計測機器開発に貢献するものである。



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