研究紹介 > 刊行物 > 研究成果選集 > 平成6年度 研究成果選集 1994 > マツ材線虫病の発病とマツの水分生理特性との関係
更新日:2012年7月11日
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問題名:暖温帯・亜熱帯地域の森林管理技術の高度化
担当:関西支所樹病研究室 池田武文
マツ材線虫病の代表的な症状として木部通水性の低下・停止が知られている。この症状は仮道管でキャビテーションが発生することによると考えられている。そこでキャビテーションの発生をAE(アコースティックエミッション)法で非破壊的に検出し,マツの水分状態との関係を明らかにした。さらに,マツノザイセンチュウの侵入に対する抵抗性マツの組織学的反応から,抵抗性のメカニズムを考察した。
AE法で検出したキャビテーションは,マツの木部圧ポテンシャルが急激に低下したり,針葉の変色が起こるかなり以前から発生しており,線虫接種前後の同じ木部圧ポテンシャルに対する発生頻度は,接種前に比べて接種後で多かった(図1)。通常,日中に生じたキャビテーションは夜間に回復するが,マツ材線虫病罹病木で発生したキャビテーションは回復することなく蓄積され,最終的に木部の通水機能が完全に停止することが明らかになった。
さらに,抵抗性のマツでもマツノザイセンチュウの侵入に対して次のような影響が見られた。木部の一部がエンボリズムをおこして通水機能を失ったり(写真1),柔細胞の破壊や変性が起こっていた(写真2)。これらの結果は弱病原性マツノザイセンチュウを感受性マツに接種して生き残った個体で観察された結果と類似していた。つまり,マツノザイセンチュウが侵入しても枯れないマツには次の三つの現象が共通して認められることが明らかになった。
一方,マツノザイセンチュウの侵入によって枯れたマツでは,木部全体の通水の停止と柔細胞や形成層の変性,破壊が起こっている。これらをまとめると,上述した三つの現象がマツノザイセンチュウの侵入に対するマツの抵抗性の現れであることが明らかになった。
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