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更新日:2012年8月24日

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路網整備による交通利便性の向上

研究問題名: IV.生産目標に対応した施業技術の向上と機械化による作業技術の体系化

生産技術部 林道研究室 鈴木 秀典・大川畑 修

背景と目的

低コストで生産性の高い森林作業のためには,路網は必要不可欠である。路網とは林道や作業道などの総称で,作業のために林内へ到達すること,木材などを輸送することの2つの機能を持つ。後者は,路網が文字通り網目構造(循環路)となり,近道となる路線が交通距離を短縮することで,効率よく発揮される。当然,循環路が多く形成されるほど,交通利便性は向上すると考えられるが,詳細な関係は明らかにされていない。そこで,循環路網の発達度および交通利便性を定量化し,この関係を明らかにすることを目的とした。

成果

循環路が形成された場合,同じ路線を通らずに元の場所に戻ってくることが可能となり,森林管理における巡視などの面で効率がよい。そこで,循環路網の発達度を表す指標として,すべての路線を走行し,最短距離で再びスタート地点まで戻ってくる場合(往復移動を許容し,最短距離で元の地点に戻る一筆書き)を設定し,その時の走行距離(巡視距離)を各路網の総延長で除した数値(巡視係数)を求めた。巡視係数は,1以上2以下の値をとり,1に近いほど巡視の効率は高くなる。また,交通利便性は,路網計画などで一般的に用いられる迂回率η=(L-Lo)/Loによって評価した(ただし,Lは2点間の交通距離,Loは同直線距離)。迂回率は,0以上の値をとり,小さいほど交通利便性が高いといえる・任意の点(端点,分岐点)間の交通を考え,路網の全ての2点間における迂回率を計算し,平均値をその路網の点間迂回率とした。また,人や木材の輸送においては,林内への通勤のように路網の外から路網内のある地点へ,あるいは,運材のように路網内から路網の外へといった移動が普通であり,対象路網とその外の道路との接点が1つであれば,必ずこの点を通ることになる。そこで,この接点を路網の起点とし(図1),ここから路網の全ての点への迂回率を平均したものを,起点からの迂回率とした。図2に示すような,比較的整備の進んでいる路網を対象に計測したところ,巡視係数と点間迂回率との間には正の相関があり(図3),循環路網が発達するほど,2点間の交通利便性は向上することが分かった・しかし,巡視係数と起点からの迂回率との間には相関関係が見られず(図4),起点からの交通は,循環路網の発達に影響を受けないことが分かった。この理由として,起点と各点との間は,地形的な条件から,交通距離を短縮するような新たな路線を作設する余地が少なく,後に作設された路線が近道になりにくいことが考えられる。

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図1 路網の起点の概念図

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図2 計測対象路網

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図3 巡視係数と点間巡回率の関係
相関係数0.54(有意水準5%で相関有り)

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図4 巡視係数と起点からの巡回率の関係

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