研究紹介 > 刊行物 > 研究成果選集 > 平成12年度 研究成果選集 2000 > 人の官能評価と機器分析で高嗜好性シイタケを作る
更新日:2012年8月24日
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研究問題名: VIII.生物機能及び遺伝資源特性の解明と新利用技術の開発
生物機能開発部 | きのこ育種研究室 | 平出 政和 |
生物機能開発部 | 生物活性物質研究室 | 宮崎 良文 |
シイタケは日本を代表する主要なきのこの一つであり,特に乾シイタケは生シイタケと比較して保存性及び栄養価に優れ,また独特の香りを有し古くから食材として利用されている。しかし,近年における嗜好の多様化等により,香りが強い従来通りの乾シイタケだけでは消費者のニーズに応えられないと考えられる。そこで,本研究では消費者の嗜好に合わせた乾シイタケの作出を目標とし,「におい」に対する消費者の嗜好調査,乾シイタケの「におい」を規定する成分の同定及びその含有量調節法の開発を行った。
10〜60代の男女,計335名を対象として調査を行った。最初に「元々持っている乾シイタケに対する好き・嫌いの印象」を調べた。さらに,3濃度の乾シイタケのにおいを嗅いでもらった時のにおいの強さの感覚強度を調べ,上記の元々の印象との関係を調べた(図1)。その結果,元々シイタケの好き(嫌い)な人は実際に,においを嗅いだ時に弱く(強く)感じることが分かった。図2には実際に,「においを嗅いだときの好きな程度」と「感覚強度」の関係を示す。好きな人は「楽に感じるにおい」及び「やや好き」と評価していたが,嫌いな人は「強いにおい」及び「かなり嫌い」と評価していることが分かった。
さらに,機器分析による乾シイタケ中の「におい成分含有量」とフレーバーリスト8名による「香りの強さ」との関係を調べた。その結果,1,2,4-トリチオランならびにレンチオン含有量が増加するとともに,乾シイタケの「香りの強さ」は強まり,乾シイタケのにおいは1,2,4-トリチオランならびにレンチオン含有量に依存することが明らかとなった(図3)。
また,培地に種々の添加物を加えて,シイタケを栽培したところ,システインとメチオニンの400mg/kgを上限とした添加は1,2,4-トリチオランならびにレンチオン含有量を増加させることが明らかとなった(図4)。
以上より,1)同じ乾シイタケのにおいを吸入しても,好き(嫌い)な人は弱くかつ好き(強くかつ嫌い)と感じること,2)そのにおいの強さは,1,2,4-トリチオランならびにレンチオン含有量に依存すること,ならびに3)1,2,4-トリチオランならびにレンチオン含有量は,システインとメチオニンの培地への添加によって調節できることが分かった。人の官能評価と機器分析によって高嗜好性シイタケを作出できることが明らかとなった。
なお,本研究は農林水産技術会議大型別枠研究「新需要創出のための生物機能の開発・利用技術の開発に関する総合研究」による。
図1 「元々持っている乾シイタケに対する好き・嫌いの印象」と「感覚強度」の関係
注:全ての濃度において回帰直線は1%危険率にて有意差有り
注:各量の乾シイタケ粉末を250ml容ボトルに入れて吸入したときの結果
図2 「感覚強度」と「においを嗅いだ際の好き嫌い」の関係
A:乾シイタケに対する印象が「非常に好き」で構成されている群
B:乾シイタケに対する印象が「かなり好き〜かなり嫌い」で構成されている群
C:乾シイタケに対する印象が「非常に嫌い」で構成されている群
図3 「香りの強さ」と「におい成分」含有量の関係
図4 乾シイタケ中の1,2,4-トリチオラン及びレンチオニン含有量
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