研究紹介 > 刊行物 > 研究成果選集 > 平成13年度 研究成果選集 2001 > 厚物構造用合板を利用した高耐震床の正しい設計法の開発と性能評価
更新日:2012年7月18日
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構造利用研究領域長 | 神谷 文夫 | |
構造利用研究領域 | 木質構造居住環境研究室 | 杉本 健一、三井 信宏 |
複合材料研究領域 | 複合化研究室 | 渋沢 龍也 |
木造住宅は新築戸建て住宅の中で80%強のシェアを占め、その人気は非常に高い。その中で中心を占める在来構法は、より合理的な施工方法とより高い性能を目指して、現在でも進化を続けている。最近の大きな進化は、筋かいに代わってツーバイフォー構法やプレハブ構法のように合板を利用するようになってきたことである。本研究では、これをさらに進め、床根太をなくして厚さ24〜35mmの構造用合板を梁に直接張ることにより、施工を合理化し、耐震性をはじめとする住宅性能を向上させる床構造の設計法を開発し、その性能を評価することを目的とする。
大型試験体による曲げ試験とせん断試験並びに釘接合部の強度試験を行い、その強度性能を評価した。その結果は、床構造開発の基本データとなった(写真1〜3)。
床は水平構面と呼ばれ、耐力壁と同様に重要な耐震要素である。特に、部屋が大きく(壁と壁の間隔が広く)吹き抜けなどを設ける最近の住宅では、床構面が弱いと、いくら耐力壁をしっかり作っても地震に弱い住宅になってしまう。本研究では設計した床について、長さ10.92m、奥行き3.64mの実大床試験体による耐震実験を行った(写真4、5)。その結果、従来の火打ちばりによる床の約10倍、厚さ12mmの構造用合板を張った床の1.5倍の耐力があることが証明された(図1)。
マンションでは上階からの音の遮音性能が問題となっているが、一般木造住宅でも床に対して高い遮音性能が求められるケースが増えている。したがって、6畳間の箱形実大モデルを作り、JISに定められた重量及び軽量衝撃音試験により、その遮音性能を評価した(写真6)。その結果、遮音性能は重量衝撃音に対してL75(従来の床と比べて1〜2ランク上、12mm合板床の1ランク上)、軽量衝撃音に対してL85(12mm合板床並)の性能であることが分かった(図2)。
本床構造は床根太を省略している。また場合によっては、合板の目地を受ける部材(受け材)をも省略し、開発したサネで合板の縁部をつなぐことができる。その場合、ピアノ(250kg程度)などを置くと、脚による局部的な集中荷重によって、合板が陥没したり、曲げ破壊するなどのことが懸念されるため、床試験体に局部荷重を加える耐力試験を行った。その結果、本床は1トン以上の局部荷重に耐えることが分かった(写真7)。
成果は日本合板工業組合連合会に受け渡し、約20頁にわたる設計指針「ネダノンマニュアル」を作成した。指針は広く設計者に配布され、厚物構造用合板(組合商品名:ネダノン)を使った床の正しい設計法の普及に役立っている。これからの課題として、スギだけあるいはスギとカラマツ等による軽くて強い合板の開発と、それを利用した床構造の改良に取り組んでいる。
本研究の一部は、東京合板工業組合、(株)ポラス暮らし科学研究所との共同研究によった。
写真1 厚物合板の曲げ性能評価
写真2 厚物合板のせん断性能評価
写真3 厚物合板の釘接合強度性能評価
写真4 床の耐震実験
写真5 床の耐震実験
写真6 床の遮音実験
写真7 床の局部荷重耐力評価実験
図1 床の耐震実験結果
(荷重-変形関係)
最大200kN(約20トン)の力に耐える
図2 床の遮音実験結果
重量:L75 軽量:L85
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