平成21年版 研究成果選集 2009

平成21年版 研究成果選集 2009を一括ダウンロード（PDF：24,124KB）

重点分野アア地球温暖化対策に向けた研究

アアa 森林への温暖化影響予測及び二酸化炭素吸収源の評価・活用技術の開発

• 日本の竹林のバイオマス炭素蓄積量、吸収量の算定手法の開発（PDF：1,849KB）
  森林計画データを活用して全国の竹林のバイオマス炭素蓄積量と吸収量を推定する手法を開発しました。
• 森林の炭素固定量の変動予測に向けたシミュレーションモデルの開発（PDF：816KB）
  温暖化などの気象要因と間伐施業などの森林管理の違いが、人工林の炭素固定能に及ぼす影響を評価するため、スギ・ヒノキの収穫試験地での実測データを分析し、炭素固定量の変動予測のためのモデルを開発しました。
• CDM植林が熱帯の生物多様性に与える影響～植林で熱帯林の豊かな生物は回復するか？～（PDF：1,209KB）
  森林が失われている熱帯で人工林を作ると生物多様性はどうなるのか？ CDM植林を想定し、インドネシアの東カリマンタンで植林地における生き物の回復状況を調べました。

アアb 木質バイオマスの変換・利用技術及び地域利用システムの開発

•  酸素漂白導入による木質バイオエタノール製造効率の向上（PDF：684KB）
   アルカリ前処理した木質バイオマス中に残存するリグニンを酸素漂白処理により除去することでセルロースを分解する酵素が作用しやすくなり、エタノール収率増加と分解時間短縮という成果を得ました。
• 2050年までの木材利用による CO2削減効果シミュレーション（PDF：690KB）
    木材は「炭素貯蔵効果」、「省エネ効果」、「化石燃料代替効果」という3つの働きで二酸化炭素削減に貢献します。本研究では木材の積極的な活用により 2050年までにどのぐらいの削減効果が得られるかをシミュレーションしました。
• 木質ペレットの燃えやすさを見極める（PDF：932KB）
  地球環境に優しい木質バイオマス燃料として木質ペレットが注目されています。コーンカロリーメーターという装置を用いることで、木質ペレットの品質と燃えやすさとの関わりを見極められることがわかりました。
  

重点分野アイ森林と木材による安全・安心・快適な生活環境の創出に向けた研究

アイa 生物多様性保全技術及び野生生物等による被害対策技術の開発

• 環境収容力にもとづくシカの個体数管理と森林再生（PDF：951KB）
  シカの個体数が増加して森林衰退が著しい大台ケ原の森林を再生するために、シカの目標密度 (＝環境収容力 )に応じた下層植生の管理手法を提案しました。
• 鳥類の多様性は海外における土地利用の変化も反映している（PDF：661KB）
  鳥の多様性は日本全体の森林の変化だけでなく、東南アジアにおける変化の影響も受けていることがわかりました。
• 特定国内希少野生動植物種レブンアツモリソウの有効な保全対策とは？（PDF：1,256KB）
  絶滅危惧種レブンアツモリソウをモデルとして、培養個体の販売を通じて保全を行える特定国内野生希少野生動植物種について、培養技術の確立、販売による保全施策の有効性、自生地での保全の現状と対策を検討しました。
• マツノザイセンチュウの DNA情報を利用した簡易なマツ材線虫病診断法の開発（PDF：921KB）
  専門的な知識や技術を必要としない簡単なマツ材線虫病診断法を開発しました。枯れたマツの材内に存在するマツノザイセンチュウの DNAを検出することによって診断する方法です。

アイb 水土保全機能の評価及び災害予測・被害軽減技術の開発

• 岩塊同士の衝突が岩盤崩落・落石の流下距離を抑制する（PDF：938KB）大きな災害をもたらす山地の岩盤崩落、落石の到達距離予測のために、岩塊群の崩落現象について物理実験と数値実験を行ない、岩塊個数が多いほど岩塊同士の衝突のために運動エネルギーが多く失われて、流下距離が短くなることを明らかにしました。
• 立木材積の変化から水流出の長期的な変動を再現する（PDF：722KB）
  森林の水源かん養機能をより発揮させる管理方法を確立するため、森林の変遷に伴う長期的な水流出の変動を定量的に評価する手法を開発しました。
  

アイc 森林の保健・レクリエーション機能等の活用技術の開発

• 森林浴が働く女性の免疫機能を高め、ストレスホルモンを低下させた（PDF：872KB）
  都会で働く女性看護師に2日間の森林浴をしてもらい、がん細胞などを殺傷する NK(ナチュラル・キラー）細胞活性を測ったところ、旅行後1週間経っても 33％高いなど、森林浴が健康維持に役立つことが分かりました。
• 里山資源の積極的利用で、健康な次世代里山を再生する（PDF：2,374KB）
  里山林の健全性が低下しており、放置すると次世代の森林が育たない恐れがあります。地域社会で木質資源を循環利用しつつ、里山林を健康に持続させる整備手法について、行政機関や NPO・ボランティア団体、市民に提案します。

アイd 安全で快適な住環境の創出に向けた木質資源利用技術の開発

• 世界初の実大木橋の破壊実験―壊してわかった既存木橋の残存強度―（PDF：2,530KB）
  木橋が安全であるかどうかを、壊して確かめることはできません。世界で初めて、実際に使われていた木橋を壊して、その強度を確かめることができました。
• 木質材料は「4VOC基準適合」建材（PDF：671KB）
  シックハウス対策のため、4種類の VOC（揮発性有機化合物）について業界団体の自主基準が制定されました。木質材料はこの基準に適合することが分かり、「4VOC基準適合」建材として認められました。
  

重点分野アウ社会情勢変化に対応した新たな林業・木材利用に関する研究

アウa 林業の活力向上に向けた新たな生産技術の開発

• 大面積皆伐の対策はどうあるべきか？（PDF：883KB）
  大面積皆伐の発生要因、皆伐後の植生回復、災害発生ポテンシャルの調査・分析の結果を基に、皆伐地の把握、作業計画の提出、改善計画の提案、低コスト育林への助成、環境に配慮した伐出の奨励の5項目を骨子とする大面積皆伐対策のガイドラインを作成しました。
• スギ花粉はどこから飛んでくるのか？～首都圏に影響を及ぼすスギ花粉発生源の特定手法を開発～（PDF：722KB）
  スギ花粉飛散予報モデルを改良することによって、首都圏に多量の花粉を供給するスギ花粉発生源を特定する手法を開発しました。これにより、花粉発生源対策の効果を効率的に発揮させることが可能になると期待されます。

アウb 消費動向に対応したスギ材等林産物の高度利用技術の開発

• 木製のガードレールや遮音壁のための耐久設計・維持管理指針案（PDF：1,746KB）
  木製道路施設の問題点であるシロアリや腐朽菌による生物劣化の防止や退色防止等の美観保持のため、環境に配慮した耐久設計・処理法と非破壊検査による劣化度評価手法を開発し、木製道路施設の設置に必要不可欠な耐久設計・維持管理指針案を示しました。
• 木質系廃棄物を利用した軽量な屋上緑化法の開発（PDF：824KB）
  木質系廃棄物を原料として吸水力を大きく向上させた保水資材を製造し、マット植物と組み合わせた軽量な緑化法を開発しました。この軽量緑化法の開発により既存建築物の緑化が簡単にできるようになりました。

重点分野イア新素材開発に向けた森林生物資源の機能解明

イアa 森林生物の生命現象の解明

• ポプラの環境ストレス応答性遺伝子の網羅的発現解析（PDF：641KB）
  DNAマイクロアレイを用いて、ポプラの環境ストレス応答性遺伝子を 2,214種類同定しました。これらの遺伝子群は、環境保全に貢献する高環境ストレス耐性遺伝子組換え樹木の開発に役立ちます。
• 放射線は樹木にどのような影響を及ぼすのか？（PDF：963KB）
  樹木への放射線の影響を明らかにするため、ポプラに放射線を照射した後におこる様々な異常について調べました。また、放射線の照射によって働く DNA修復酵素遺伝子を明らかにしました。
• アジア産マツタケの DNA原産国判別法（PDF：1,883KB）
  レトロトランスポゾンと呼ばれるマツタケの進化に深く関わった DNA配列を指標にして、アジア産マツタケの原産国を判別する方法を開発しました。

イアb 木質系資源の機能及び特性の解明

• 効率的・効果的なマイクロ波減圧水蒸気蒸留法の開発-スギ葉の精油成分の利活用に向けて-（PDF：2,352KB）
  樹木精油の効率的・効果的な採取方法として減圧条件下でマイクロ波を熱源にした水蒸気蒸留装置を開発しました。本法によれば、揮発しやすく嗜好性の優れたモノテルペンの割合が高い精油が短時間で採取できます。
• 木材の中の DNAはどこに多く残っているのか？（PDF：803KB）
  木材からの DNA抽出効率は心材化や伐採後の時間の経過に伴って低下します。しかし、長期間保存された木材中にも DNAが残存していることがわかり、木材製品の樹種の識別に DNA分析が適用できる可能性を示しました。

重点分野イイ森林生態系の構造と機能の解明

イイa 森林生態系における物質動態の解明

• 降水と渓流水の水質データベース「FASC-DB」を公開（PDF：912KB）
  全国7地域の森林流域でこれまで観測してきた降水および渓流水の水質モニタリング結果をデータベース化し、森林総合研究所のウェブサイトを通じて公開しました。
• 小さくても丈夫が取り柄、埋めて使える CO2濃度センサー（PDF：1,073KB）
  土壌中の CO2濃度を長期測定するために、土壌埋設用の小型で頑丈な CO2濃度計を開発し、その性能を評価しました。その結果、野外実験によって十分な性能をもっていることを確認しました。
• 森林の炭素貯留機能に貢献する切り捨て間伐木（PDF：893KB）
  15の道府県で我が国の主要な植栽樹種の切り捨て間伐木が分解する速さを測定しました。寒い地域では暖かい地域よりも分解する速さが遅く、炭素の貯留時間が平均して約2倍ほど長くなることが分かりました。

イイb 森林生態系における生物群集の動態の解明

• 枯れ枝に巣をつくるドロバチを守る用心棒ダニ（PDF：1,271KB）
  アトボシキタドロバチのアカリナリウム（ダニポケット）に入って新しい巣へ運ばれてゆくダニは、ドロバチ幼虫が弱らない程度に血を吸いますが、いざという時ハチの天敵を退治する、用心棒であることがわかりました。
• 壊さず測るドングリの化学成分（PDF：994KB）
  コナラのドングリに含まれるタンニンの含有率を、近赤外分光法を用いて非破壊的に測定する方法を開発しました。
• チシマザサの生育域を気候条件から予測する（PDF：1,438KB）
  日本の冷温帯・亜高山帯林の林床優占種の一つであるチシマザサについて、分布に大きな影響を与える気候要因とその閾値を明らかにするモデルを構築して、現在と 100年後の生育可能な地域（潜在生育域）を明らかにしました。