REDDプラスとは、2005年に開催された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第11回締約国会合(COP11)で提案された「途上国の森林減少・劣化に由来する排出の削減(Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries: REDD)」に、COP13の結果から「森林炭素ストックの保全及び持続可能な森林経営ならびに森林炭素ストックの向上(Conservation of Forest Carbon Stocks, Sustainable Management of Forest, Enhancement of Forest Carbon Stocks in Developing Countries)」という考え方(プラスの概念)を追加したものです。
REDD基礎知識
REDDプラスとは?
地球温暖化対策としてREDDプラスが位置付けられた背景
途上国の森林減少は気候変動の主要な原因として位置付けられています。例えば、
- 2007年に発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次評価報告書(Fourth Assessment Report)によると、人為活動に伴う温室効果ガス(Greenhouse Gas: GHG)排出量の約2割が森林減少・劣化に由来します。
- 2007年に発表されたスターン・レビューは、森林減少の抑制はGHG削減対策として費用対効果が高いと述べています。
- 食糧農業機関(Food and Agriculture Organization: FAO)は、ブラジル、インドネシア、熱帯アフリカにおいて特に森林減少が進行していることを示しています。
しかし、京都議定書には途上国における森林減少・劣化を抑制する努力を評価する仕組みが存在しません(植林のみ対象の活動とされています)。そこで、途上国における森林減少・劣化を抑制し、GHG排出量を削減する取組を国際的な気候変動対策として位置付け、そうした取組にインセンティブを与えるべきであるとの提案が行われました。
以上の背景から、UNFCCCの下でREDDプラス実施に向けた議論が行われています。また、UNFCCCに先行して、世界銀行等の国際機関による取組、民間ベースでのREDDプラスのDemonstration Activity実施が進んでいます。
REDDプラスの仕組み
- REDDプラスの基本的な仕組みは、過去のGHG排出量データ等を参考に森林減少等に伴うGHG排出量の将来予測シナリオ(参照レベル)を設定し、取組実施によってGHG排出量が参照レベルの水準を下回れば、その努力による排出削減量を獲得できるというものです(図1)。
- ただし、単に森林からのGHG排出削減・吸収増加のための活動に取り組めばよいわけではなく、同時に森林生態系の持つ生物多様性の保全や現地住民への配慮などといったセーフガードを考える必要があります。
先行して実施されている基金活動や民間事業体等による実証事業の成果が、UNFCCCの下での議論へインプットされています。
図をクリックすると拡大します。
※AWG-LCA: 気候変動枠組み条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会
※SBSTA: 科学技術上の助言に関する補助機関
REDDプラスに関する主要な論点
REDDプラスの実施に向けた議論における主要な論点と概念を以下に紹介します。
フェーズドアプローチ (Phased Approach)
REDDプラス活動を段階的に実施するという考え方。フェーズ1~3の3段階に分けられています。
- フェーズ1 【準備段階】: 国家戦略または行動計画、政策・措置の策定、キャパシティビルディング
- フェーズ2 【試行段階】: 更なるキャパシティビルディングや技術開発・移転および結果に基づく実証活動を含み得る、国家政策・措置および国家戦略又は行動計画の実施
- フェーズ3 【完全実施段階】: 完全に計測・報告・検証されるべき結果に基づく活動
資金オプション
途上国がREDDプラスを実施するための資金には、国際基金の活用、二国間での支援、市場メカニズムの活用等が考えられています。
- 国際基金 : 国際機関等が運営する基金に先進国各国が資金を拠出し、これを途上国へ配分します。基金により支援フェーズが異なります(表1)。
- 二国間支援 : 特定の先進国が特定の途上国に対し支援を実施します。二国間で協定を締結する場合もあります。
- 市場メカニズム : REDDプラスプロジェクト及びその実施によるGHG排出削減・吸収量をクレジット登録機関に認証されたものについて、その排出削減・吸収量を炭素市場で取引する仕組みです。
ネスティッドアプローチ (Nested Approach)
はじめは取組が比較的容易なプロジェクト規模で活動を実施し、その後準国ベース、国ベースへと取組を拡大するという方法です。
- UNFCCCは国ベースもしくは準国ベースでのREDDプラス活動実施を原則としていますが、国全体のモニタリング実施、住民の合意形成等の課題が多くあるため、国ベースもしくは準国ベースにこだわらずプロジェクト規模での早期実施による知見の集積を優先する考え方を示しています。
測定・報告・検証 (MRV)
REDDプラスの活動実施状況を測定(Measurement)し、国際的に報告(Reporting)し、その成果を検証(Verification)することで各国のGHG排出削減・吸収促進行動の透明性・正確性を担保する仕組み。
- 特にREDDプラスにおいては、堅牢かつ透明な国家森林モニタリングシステムの構築が必要とされています。
セーフガード (Safeguard)
REDDプラスの活動実施にあたり、GHGの排出削減・吸収増加以外に配慮すべき事項です。主なセーフガードは、以下の3つに大別されます。
- 森林ガバナンスの整備: 透明かつ効果的な森林の管理・統治体制を整備します。体制の整備にあたっては、国際合意や実施国の法令、制度、主権、国家森林プログラム等に配慮する必要があります。
- 生物多様性の保全: 天然林を転換せず保護・保全し、また生態系サービスに関するインセンティブを付与し、さらに社会・環境的利益の増強となるような行動を促進・支援します。
- 地域住民・先住民への配慮: 先住民や地域住民の知見や権利を尊重し、活動実施による利益の公平な配分を行います。
出典
- IPCC (2007) Fourth Assessment Report: Climate Change 2007
- FAO (2011) Global Forest Resources Assessment 2010
- Stern N. (2007) Stern Review on the Economics of Climate Change
- UNFCCC Webサイト
- VCS Webサイト
- FCPF Webサイト
- FIP Webサイト
- UN-REDD Webサイト
- Amazon Fund Webサイト
- CBFF Webサイト
最終更新日: 2012年6月14日
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