ホーム
センター紹介
挨拶(理事長・センター長)
目的・目標
組織・体制
REDD基本情報
背景
国際交渉の状況
世界の森林減少の状況
REDD基礎知識
主要国の動向
センターにおける取り組みの紹介
はじめに
カンボジアでの取り組み
マレーシアでの取り組み
パラグアイでの取り組み
セミナー・ワークショップ
REDD関連会議カレンダー
セミナー・ワークショップ報告
関連文献
文献リスト
ヘルプデスク
問い合わせ
FAQ
アクセス
リンク
国内の関連情報
海外の関連情報

REDD基礎知識

最終更新日:2011年3月31日

新しいバージョンはこちら

REDD+ とは何ですか?

 REDD+ とは、気候変動枠組条約締約国会合(COP)で議論されている気候変動の緩和活動の一つであり、森林減少・劣化による排出削減、森林保全、持続可能な森林管理、森林炭素蓄積の増強(Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradation and the role of conservation, sustainable management of forests and enhancement of forest carbon stocks in developing countries)の略称として呼ばれ、REDD+ あるいはREDD-plus と表記されています。REDD+ の活動のうち、「REDD」は森林減少・劣化に よる排出削減を指し、「+」の部分は、持続可能な森林経営等の森林保全活動等を通じた森林の炭素吸収機能の維持・強化の活動を指しますが、具体的な活動の範囲については議論が行われています。
 現在、REDD+ についての国際的に行われている議論では、森林減少・劣化の削減等の活動を行い、それにより温室効果ガス排出を削減あるいは吸収量を増加できれば、その量に応じて経済的なインセンティブを与えるという「ポジティブ・インセンティブ」の考え方が主流になっています。これは、「森林減少・劣化は農地や牧場、都市等の開発により進むのだから、それよりも森林を維持した方が経済的に有利であれば、森林は維持されるだろう」という社会経済的な視点に立つ考え方です。REDDはブラジルやインドネシアの熱帯雨林のように森林減少が止まらない地域が主な対象ですが、「プラス」が加わることで、インドや中国など森林減少の止まった国においても、森林管理の強化や植林等で炭素蓄積を増やすことで、排出削減あるいは吸収増加となる余地が出てきます。

REDD+ の論点とは?

 ここでは、REDD+を進めるにあたっての論点について、温室効果ガス排出量の観測手法や算定方法等の方法論や、REDD+を進める枠組みや資金を中心とした政策論といった観点から説明します。

①方法論

 REDD+が排出削減量に応じたインセンティブをもたらす仕組みであるためには、まず森林の炭素蓄積量の変化を適切にモニタリングできなければなりません。COP15と並行して開かれたSBSTA31において合意された方法論では、堅牢で透明性を持つ森林モニタリングシステムの構築の必要性が示されました。加えて、算定手法としてIPCC ガイドラインを用いること、さらに炭素変化量はリモートセンシングと地上調査の組み合わせにより推定することが明記されました(「国際交渉の状況」も参照)。しかし、詳細な方法論までは示されておらず、これらの合意の基礎の上に立ち、個別具体的な手法を検討していく必要があります。
 モニタリング手法に加えて、リファレンスレベルの設定方法も方法論の検討の鍵となります。なぜなら、評価される削減量は、リファレンスレベルの設定方法によって大きく変化するからです。以下に、代表的なリファレンスレベルの設定方法とそれにより評価される削減量についての概念を図示します。

出所:松本(2010)

 この図において、①基準年によるリファレンスレベルは、現在の京都議定書の基準年比と同様な考え方ですが、排出量の年々変動が大きい場合には有利・不利が大きく表れます。②基準期間によるリファレンスレベルでは、年々の変動を平準化する効果があります。また、排出量の変化を一次回帰式で表した③簡易モデルによるリファレンスレベルでは、求め方は比較的簡単ですが、図のように極端な評価値が得られる恐れがあります。また、回帰式を得るほど、過去の排出量の推移を推定できるのかという問題もあります。さらに、④将来予測モデルによるリファレンスレベルは、例えばGDPや農地面積等を説明変数として排出量を推定するモデルを開発し、それによる将来予測からリファレンスレベルを設定する方法です。政策の効果が予測できる等有利な点もありますが、過去の豊富なデータが必要であり、適用可能な国は限られると考えられます。

 このように、リファレンスレベルの設定方法は、得られるインセンティブに大きな影響をもたらします。様々なアイデアが提案・議論されているのですが、国際交渉の中では具体的な議論にはまだ至っていないのが現状です。今後、実際の適用事例や比較研究が進めば、さらに議論が激しくなってくると予想されます。

②政策論

 REDD+の政策論としての主な論点としては、政策枠組み、資金源、境界、MRV(測定、報告、検証)、対象国の国内政策、等が挙げられます。
 まず、どのような政策枠組みをつくるのか、その資金はどうするのかは、REDD+の根幹に係わる論点です。また、当初より、資金は基金方式とするのか、市場クレジット方式にするのか、という議論が継続して行われています。最近では、当初は国際的な資金で途上国の能力開発を行い、その次の段階で基金方式により限定的な支払いを実行し、さらに次の段階で本格的な市場クレジット方式に段階的に移行する、という考え方が広く受け入れられています。このような段階を踏んだ適用方法は「フェーズドアプローチ」と呼ばれており、様々な場で議論されています。
 また、REDD+は、その議論の当初から活動対象の境界を国境とする方針が示されています。これは、プロジェクトや狭い範囲での境界では、排出の移転(Displacement of emissions)のリスクがあるため、これを排除するために境界を国境とするべきという考え方です。排出の移転とは、京都議定書でのCDM(クリーン開発メカニズム)におけるリーケージに当たるもので、境界内の排出削減活動のために境界外での排出が発生してしまうことです。現在は、活動やモニタリングを国レベルで行うのは困難であるという理由で、準国(sub-national)レベルも認めるべきと主張している国もありますが、将来的に国レベルとなる見込みがある場合にのみ、準国レベルも認めるべきという議論が中心となっています。
 MRVは、REDD+だけに留まらず、温暖化対策の緩和活動全体に広く用いられている用語です。これは、排出削減量及び吸収量の評価は、測定可能(Measurable)、報告可能(Reportable)、検証可能(Verifiable)であるべき、という考え方です。特に、排出削減量・吸収量に応じてインセンティブを与えるのであれば、信頼できるMRVの仕組みを構築することは当然と考えられています。
 さらに、実際にREDD+の取り組みを進めるためには、REDD+を適切に推進できるように対象国における国内制度や政策を整備していく必要があります。たとえ森林のモニタリングシステムを構築しても、対象国が森林減少・劣化の削減等を促すための政策を実施しなければ意味がありません。SBSTA31 合意文書では、対象国に対して、排出をもたらしている森林減少・劣化の原因を特定し、排出削減及び吸収量増加、森林炭素量の安定化をもたらすための活動を特定することを要請しています。

③その他:生物多様性との関連

 REDD+は、生物多様性など生態系サービスの面からも大きな関心が寄せられており、特に生物多様性条約との連携強化が期待されています。アーメド・ジョグラフ生物多様性条約事務局長は「森林減少・劣化に関わる気候変動に対処しなければ生物多様性の危機を解決することはできず、同様に森林その他の生態系を保護しなければ気候変動対策の成功はない」と述べ、生物多様性保護の立場からREDD+の交渉進展に期待を表明しました。しかしながら、現状では、生物多様性の議論や視点をREDD+にいかに組み込んでいくかという具体的な議論には未だ至っておらず、まずはプロジェクトレベル等の経験を踏まえた提案が求められている段階です。

参考・引用情報一覧

  • 松本光朗(2010)REDD+ の科学的背景と国際議論.森林科学60.2-5.
  • 百村帝彦 横田康裕(2010)REDD+ の制度・政策.森林科学60.19-23.