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弱ったマツで生き残るザイセンチュウの在来種

2012年8月23日掲載

論文名 Mortality of shaded pine trees inoculated with virulent and less-virulent isolates of pine wood nematodes(被陰されたマツに病原力の異なるマツノザイセンチュウを接種した際の枯死率の違い)
著者(所属)

Natsumi Kanzaki, Ryusei Tanaka and Norio Sahashi[神崎菜摘, 田中龍聖, 佐橋憲生(森林微生物研究領域)]

掲載誌

Environmental Entomology(環境昆虫学・アメリカ昆虫学会)41巻(2012年)印刷中(オープンアクセス予定) DOI: 10.1603/EN12031

内容紹介

マツ材線虫病(マツ枯れ)を引き起こすマツノザイセンチュウは、100年ほど前に北米から日本に入った外来種です。マツノマダラカミキリによって運ばれるこの線虫は、カミキリが健全なマツを食べるときに樹体内に侵入し、それを枯死させて材内で増えています。一方、日本には同じカミキリに運ばれるニセマツノザイセンチュウという在来種が生息します。この線虫は、苗木を使った室内試験の結果から、木を枯らす力(病原力)が非常に弱いためカミキリがマツを食べるときではなく、主に、枯死したマツにカミキリが産卵する際に侵入すると思われていました。そこで、カミキリがどのような状態のマツを好んで食べるか、また、野外林分で自然に衰弱したマツの成木に対してニセマツノザイセンチュウがどの程度の病原力を示すかを調べました。この結果、実際にはマツノマダラカミキリは弱ったマツでも健全なマツと同様に食べ、線虫を運びうること、病原力が弱いニセマツノザイセンチュウも、弱ったマツなら15年生以上の個体を枯らせることが確認されました。したがって、過密林分など弱ったマツがあれば、ニセマツノザイセンチュウもマツノザイセンチュウと同じ生活史が可能になります。病原力の弱いニセマツノザイセンチュウはこれまでいわれていた枯れ木だけでなく、弱ったマツも利用しながら生き残ってきたと考えられます。原産地の北米ではマツノザイセンチュウも抵抗力の強い北米在来のマツに対して病原力が相対的にごく弱いため、ニセマツノザイセンチュウと同じように暮らしているといわれます。両者の生態や生活史の比較は、今後の松枯れ対策を開発するうえでも重要であると考えられます。

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