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コナラから発散されるイソプレン(揮発性有機化合物の一種)の動態

2013年2月21日掲載

論文名 Nocturnal isoprene emission from mature trees and diurnal acceleration of isoprene oxidation rates near Quercus serrate Thunb. leaves. (成木からの夜間イソプレン放出とコナラ葉付近における日中のイソプレン酸化速度の加速)
著者(所属)

深山 貴文(関西支所)、奥村 智憲(京大)、小南 裕志(関西支所)、吉村 謙一(京大)・安宅 未央子(京大)・谷 晃(静岡県立大)

掲載誌

Journal of Forest Research, (電子版2012年6月公開、印刷版2013年2月公開) DOI 10.1007/s10310-012-0350-5(外部サイトへリンク)

内容紹介

森林は木の葉などから揮発性の有機化合物(VOC)を発散していますが、これが酸化して二次有機エアロゾル(SOA)となり、それが太陽からの光を遮ることで地球温暖化の緩和に貢献しているのではないか、という注目すべき説があります。SOAのほとんどはVOCの光酸化物からなり、VOC発散量は植生起源が人為起源より多いとも考えられていることから、森林総合研究所では森林のVOC発散特性とその酸化特性に関する研究を進めています。

森林起源のVOCの主成分は天然ゴムのモノマーであるイソプレン(C5H8)です。このイソプレンを大量に葉面から発散する植物としては、オシダ、コナラ、ユーカリ、ポプラ、エゾマツ等、140種以上が知られていますが、その発散特性の実態はよくわかっていませんでした。そこで本研究では新たに野外観測システムを開発し、京都府南部の山城試験地(コナラを主体とする二次林)でのイソプレン発散量を多点連続観測することに成功しました。

日中の観測では、正午頃にコナラ葉面から発散されたイソプレンが群落上から大気へ発散される前に葉の周辺で急速に酸化している可能性があることが分かりました。また夜間の観測では、日葉面発散量の1/4もの量が夜間に発散される例があることを見出しました。これらの結果は、イソプレンがゆっくり酸化して森林から離れた場所へ輸送された後にエアロゾル化しているのではないかと考えられてきたのに対し、既に葉の周辺で酸化が進行し、エアロゾル化している可能性を示しています。また、夜間発散量は非常に微量と考えられてきたのに対し、夜間発散量も無視できない量である可能性を示しています。SOA生成のメカニズムは不明な点が多いため、今後さらに森林のVOC発散特性とエアロゾル生成機能について野外観測による検討を重ね、森林が地球環境の維持に果たしている役割を明らかにしていく予定です。

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