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種子の豊凶は樹木が貯めた資源では決まらない

2013年5月10日掲載

論文名    Are stored carbohydrates necessary for seed production in temperate deciduous trees? (温帯落葉広葉樹の種子生産に貯蔵炭水化物は必要なのか?)
著者(所属)

市栄 智明(高知大農)、五十嵐 秀一(愛媛大連大院)、吉田 昌平(高知大院)、田中 憲蔵(植物生態領域)、正木 隆(森林植生領域)、陀安 一郎(京大生態研セ)

掲載誌  Journal of Ecology、101巻525-531ページ、2013年3月掲載、Wiley-Blackwell社、DOI: 10.1111/1365-2745.12038(外部サイトへリンク)
内容紹介

樹木が繁殖し、種子を実らせるためには多くの炭水化物が必要です。これまで樹木の種子生産には、主に根や幹など樹体に前年までに蓄えられた炭水化物が用いられると考えられてきました。特に、ブナやミズナラなど数年間隔で種子の豊作と不作が繰り返される樹種は、豊作年に大量の貯蔵炭水化物を種子の生産に使い果たし、樹体内に再び十分な資源がたまるのに時間がかかるため、豊凶現象が起こると考えられてきました。

森林総合研究所では、茨城県小川試験地で1987年から長期に渡る落葉広葉樹の種子生産量調査と種子標本の採取を継続して行っています。今回、豊凶現象の謎に迫るために、ブナやクリなど長期観測データから豊凶間隔の違いが明らかになっている落葉広葉樹10種について、種子標本に含まれる放射性炭素濃度(14C)をはかることで、種子生産に必要な炭水化物の蓄積にかかる時間を推定し、それと豊凶間隔との関係を調べました。

大気中の14C濃度は、戦後の冷戦時代に行われた大気圏内核実験によって急激に増加し、その後減少を続けています。樹木は大気中の炭素を取り込んで光合成を行い、固定した光合成産物(炭水化物)を利用して成長や繁殖を行うため、樹体に含まれる14C濃度は炭素を固定した当時の大気中の14C濃度を反映します。種子に含まれる14C濃度をはかることで、いつ蓄積した資源を利用しているかが分かるのです。

その結果、種子を作っている炭水化物は、樹種や豊凶間隔に関係なく、大部分が結実した年に光合成で生産した炭水化物が使われており、貯蔵炭水化物の利用はほとんどないことが明らかになりました。この新発見はこれまでの仮説を否定する知見で、種子の豊凶現象が貯蔵炭水化物の蓄積量以外の、例えば無機養分量などの要因によって引き起こされている可能性が高いことを強く示しています。

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