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世界遺産の島・小笠原諸島には、3タイプのウグイスがいた!

2013年5月30日掲載

論文名 Genetic and morphological differences among populations of the Japanese Bush-warbler (Aves: Sylviidae) on the Ogasawara Islands, Northern Pacific. (小笠原諸島におけるハシナガウグイスの集団間での形態的・遺伝的な相違)
著者(所属)

栄村 奈緒子(立教大), 安藤 温子(京都大), 川上 和人(野生動物研究領域), 井鷺 裕司(京都大)

掲載誌 Pacific Science、 vol.67(2):187-196、2013年5月 DOI:10.2984/67.2.3(外部サイトへリンク)
内容紹介

ウグイスは日本人になじみ深い小鳥ですが、小笠原諸島にはその亜種であるハシナガウグイスが生息しています。小笠原諸島は、父島や母島を含む小笠原群島と、硫黄島を含む火山列島から構成されます。両者の間は150kmも離れており、生物相も異なっています。ハシナガウグイスは両地域にいますが、この2集団の関係は不明でした。また、小笠原群島の聟島では、20世紀半ばにハシナガウグイスが絶滅しましたが、最近は再びウグイスが観察されるようになりました。小笠原諸島は、2011年にユネスコの世界自然遺産に登録されています。この地域の自然が持つ価値を守るには、島ごとの集団の関係を明らかにする必要があります。そこで、小笠原各地の個体の形態とDNAの配列を比較しました。

形態分析の結果、火山列島のハシナガウグイスは小笠原群島のものよりくちばしが短いことがわかりました。遺伝分析では、火山列島のハシナガウグイスは小笠原群島のハシナガウグイスを起源とするが、現在は両地域での交流はなく、異なる遺伝的集団に進化していることがわかりました。また、聟島の個体は、本州のものと同じ亜種のウグイスで、越冬のため渡ってきたものと考えられました。小笠原諸島で、ハシナガウグイス以外の亜種が見つかったのは初めてです。つまり、ハシナガウグイスには小笠原群島と火山列島の2集団があり、聟島には別の亜種のウグイスがいたということです。

ハシナガウグイスの2集団は、それぞれ独自の特徴を持つため、個別に保全する必要があります。特に火山列島では、半径1kmほどの小島である南硫黄島が唯一の分布地となっており、絶滅の可能性が高いと考えられます。一方で聟島では、絶滅原因となったと考えられる外来種のヤギやネズミが駆除されており、渡ってきたウグイスは、ハシナガウグイスの代わりに定着する可能性があります。このため、特にこれらの島で今後の推移をモニタリングし、保全のための対策を検討する必要があります。

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