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更新日:2014年5月1日

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秋田スギ天然林の世代交替は根株の上で起こる

2014年5月1日掲載

論文名

Properties of stumps that promote the growth and survival of Japanese cedar saplings in a natural old-growth forest. (天然林のスギ幼樹の成長や生存をうながす根株の特徴)

著者(所属)

太田 敬之・正木 隆・杉田 久志・金指 達郎(森林植生研究領域)、安部 久(木材特性研究領域)

掲載誌

Canadian Journal of Forest Research、 42、 1976-1982 (2012)  Doi: 10.1139/x2012-141(外部サイトへリンク)

内容紹介

スギの天然林の更新については、崩壊地など地表面が撹乱された環境で起こりやすいことが知られています。一方、長い歴史をもつ秋田スギ天然林では、伐採など人の手が多く入っていますが、その後、どのように更新が行われてきたのか不明な点が多く残されています。減少するスギ天然林の持続的な管理や保全を目指して、樹齢300年前後のスギが生育する秋田県北秋田市阿仁の桃洞・佐渡スギ天然生林で、スギの幼樹がどのような場所に生えているか、どのように成長しているかを調べました。

調査した森林には、ha当り約400本のスギ幼樹(樹長130cm以上)がみられましたが、その75%は、調査地の3%の面積でしかない根株(伐り株や風害などによる折れ株)上に生育していました。

また、根株の中でも、背の高いものほどスギ幼樹が多く生えていることがわかりました。高さ1.5~3mの根株には多いもので20本強のスギ幼樹が生えていた一方、高さ60cm未満の根株には、スギ幼樹は一本も見られませんでした。さらに、1つの根株の中でも、高い場所に生えているスギ幼樹の方が生き残りやすいことも明らかになりました。上面が平らである伐り株の方が、上面が凸凹である折れ株よりもスギ幼樹が多いこともわかりました。

このように高い位置で伐採した伐り株は過去の雪上伐採によって形成されたもので、それが更新に役だっていることが判明したのです。積雪から早く抜け出せること、地面に生えるササの下などに比べて光環境が良いことが、背の高い根株の上での有利な点であり、そのため多くのスギ幼樹が生育していると推測されます。

この知見は、現在保護林として維持されている日本のスギ天然林の管理や、長伐期のスギ人工林での、天然林でのプロセスを生かした更新技術の開発に役立てることができます。

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