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2014年6月2日掲載
論文名 |
Aquaporin water channel in the salivary glands of the Formosan subterranean termite Coptotermes formosanus is predominant in workers and absent in soldiers.(イエシロアリ唾液腺においてカースト特異的に発現するアクアポリン) |
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著者(所属) |
神原 広平(木材改質研究領域)、永江 知音(鳥取大学)、大村 和香子(木材改質研究領域)、東 政明(鳥取大学) |
掲載誌 |
Physiological Entomology, Article first published online, Mar 2014, DOI: 10.1111/phen.12052(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
木材を食害するシロアリは、木材を消化して栄養源とすることができます。木材の消化には第一段階として唾液が必要ですが、唾液の主成分は水分です。そこで、シロアリの唾液中の水分がどこを通ってやって来るのかに着目しました。水の通り道としてアクアポリンという物質が知られています。アクアポリンとは小さな穴を形成するタンパク質で、水分子だけを通す性質を持っています。そのため、アクアポリンがシロアリの唾液に水を運ぶ通り道になっているのではないかと考えました。 日本で最も深刻な建築物被害を起こすイエシロアリの唾液腺(唾液を産生し分泌する器官)について調べたところ、木材をかじって消化することのできる“働きアリ”の唾液腺には、アクアポリンが多量に存在しているのに対して、鋭く大きな顎(あご)を持つために自ら木材をかじって食べることができない“兵隊アリ”の唾液腺には、アクアポリンがないことがわかりました。このことから、唾液の分泌が多いと考えられる働きアリの唾液中の水分は、アクアポリンが作る穴を通り道にして、シロアリの体内から運ばれると考えられました。 唾液がなければ働きアリは木材を消化することはできなくなると考えられることから、アクアポリンの働きをブロックして唾液の分泌を妨げられれば、シロアリの摂食行動や木材分解を防ぐ新しい薬剤の開発につながる可能性があります。 |
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