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現在のコメツガの分布は氷期の気候が規定していた

2014年6月2日掲載

論文名

What controls the distribution of the Japanese endemic hemlock, Tsuga diversifolia? Footprint of climate in the glacier period on current  habitat occupancy(コメツガの分布を規定する要因は何か?―第四紀氷期の気候が現在の分布域に及ぼす影響―)

著者(所属)

津山 幾太郎(北海道支所)、中尾 勝洋(植物生態研究領域)、比嘉 基紀(高知大学)、松井 哲哉(植物生態研究領域)、志知 幸治(立地環境研究領域)、田中 信行(北海道支所)

掲載誌

Journal of Forest Research, 19, 154-165, February 2014, DOI: 10.1007/s10310-013-0399-9(外部サイトへリンク)

内容紹介

植物の分布は気候要因や、土壌条件・地形などの非気候要因によって決まると考えられています。しかし、全ての種の分布がこうした現在の環境要因だけで説明できるわけではありません。ある生物種の生息にとって好適な場所(生育適地)でも、実際にはその種が分布しないといった、ずれがあることが知られています。「空白の生息地」と呼ばれるこうしたずれはなぜ生じるのでしょうか。

本州亜高山帯の優占種であるコメツガについて、その原因を明らかにするため、統計モデルを用いて分布を規定する要因を明らかにし、最終氷期(約21000年前)の分布を推定するとともに現在の分布と比較しました。コメツガは、現在は日本の本州以南にのみ分布しますが、生育に好適な気候環境(空白の生息地)が北海道にあることがわかっています。

解析の結果、冷涼で夏期降水量が多い環境を好むコメツガは、第四紀(約258万年前~現在)に繰り返された氷期において、降水量の減少に伴う乾燥によって、現在空白地帯となっている北海道から消滅し、間氷期に再び好適な環境が形成されたものの、当時分布していた逃避地(青森県北部)との間に広がる地理的障壁(津軽海峡や平野部)によって戻ることができず、現在に至ったことが示唆されました。

このように、過去の気候変化が現在の植物分布に与える影響を定量的に明らかにしたことは、将来の気候変化の影響評価を行う上でも重要な意味を持つと考えられます。

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