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2014年6月16日掲載
論文名 |
Genetic differentiation and genetic diversity of Castanopsis (Fagaceae), the dominant tree species in Japanese broadleaved evergreen forests, revealed by analysis of EST-associated microsatellites.(ESTに由来するマイクロサテライト分析で明らかになった、日本の常緑広葉樹林の優占樹種であるシイ属(ブナ科)の遺伝的分化と多様性) |
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著者(所属) |
青木 京子(京都大学)、上野 真義(森林遺伝研究領域)、上條 隆志(筑波大学)、瀬戸口 浩彰(京都大学)、村上 哲明(首都大学東京)、加藤 真(京都大学)、津村 義彦(森林遺伝研究領域) |
掲載誌 |
PLoS ONE 9(1): e87429, January 2014, DOI: 10.1371/journal.pone.0087429(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
わが国の照葉樹林を構成する主要な樹木にシイがあります。わが国のシイ属は葉や堅果(ドングリ)が大型で葉の表層細胞が2層のスダジイと、葉や堅果が小型で葉の表層細胞が1層のコジイがあるとされています。しかし、中間型も多く観察され両種の境界は明確ではなく、両者を別種として区別すべきか同一種とすべきか専門家の間でも意見が分かれていました。 そのために日本の各地(62か所)に生育するシイを収集しマイクロサテライト* と呼ばれるDNAマーカーの一種を使って解析したところ、スダジイ、コジイはDNAで明瞭に区別できる別種であることが明らかになりました。また、形態的に中間型のものは遺伝的に雑種と判断されるものでした。一度は種分化したスダジイとコジイがまた接触したことで、分布の重なり合う地域で雑種を作るようになったと考えられます。 さらにスダジイにおいては琉球列島及び東日本と西日本とに遺伝的な違いが存在することが分かりました。遺伝的多様性はスダジイ、コジイともに九州地方以南で高く保たれていました。これは最終氷期に九州以南に多くの個体が生き残り、それより北では生き残った個体数が少なかったことを示唆しています。 これらの結果から、スダジイとコジイはそれぞれ別種として扱う必要があること、さらにスダジイはその地域性(琉球列島、東日本、西日本)があることが分かりました。こうした成果は、今後の植生復元事業や種苗の配布範囲を考える際に活用できると期待されます。 * :マイクロサテライト、DNA塩基配列のうちACACAC・・・のような単純な繰り返し配列の繰り返し数の違いを利用したDNAマーカー、繰り返し数が個体ごとに大きく違うため個体識別などにも使える感度の高いマーカー |
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