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地球温暖化で常緑広葉樹の分布域がこう変わる

2014年7月1日掲載

論文名

Changes in the potential habitats of 10 dominant evergreen broad-leaved tree species in the Taiwan-Japan archipelago (台湾―日本列島に優占する常緑広葉樹10種の潜在生育域の変化)

著者(所属)

中尾 勝洋 (植物生態研究領域)、 比嘉 基紀 (高知大学)、 津山 幾太郎 (北海道支所)、 Cheng-Tao Lin ・ Shih-To Sun ・Jian-Rong Lin ・Chyi-Rong Chiou (台湾大学)、 Tzu-Ying Chen (宜蘭大学)、 松井 哲哉 (植物生態研究領域)、 田中 信行 (北海道支所)

掲載誌

Plant Ecology (2014. 3.27 受理。現在、Online first) DOI : 10.1007/s11258-014-0329-8(外部サイトへリンク)

内容紹介

台湾から日本にかけて生育する常緑広葉樹への地球温暖化の影響を知るために、現在と将来(2081-2100年)の潜在生育域を予測しました。対象種は、台湾から日本にかけて広く生育し、優占種となる10種類の常緑広葉樹です。解析は、対象種の分布と気候要因との定量的な関係を、非線形回帰に基づく高精度の予測ができる一般化加法モデル(GAM)を用いてモデル化しました。これらの対象種は、おもに気温や降水量の影響を受けていました。構築したモデルとSRES A1b排出シナリオ(エネルギーのバランスを考慮した高度成長シナリオ)に基づく20種類の将来気候シナリオを用いて将来の分布域を予測したところ、いずれの種もその潜在生育域は、温暖化に伴い北方や高標高へ拡大すると予測されましたが、その程度は種類や地域で異なりました。また、スダジイ、ヤブツバキ、イスノキ、コバンモチの4種は、台湾や琉球列島などが分布の南限域ですが、南限近くで将来の潜在生育域が縮小し脆弱になると予測されるため、今後注意する必要があります。一方、拡大の予測される常緑広葉樹は温暖化の指標種となり、効果的な温暖化影響検出につながると考えられます。

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