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サラワク熱帯泥炭湿地林の木のバイオマス推定には、樹洞(うろ)を無視できない

2015年4月15日掲載

論文名

Allometric equations considering the influence of hollow trees: A case study for tropical peat swamp forest in Sarawak(樹洞を考慮したアロメトリ式:サラワク熱帯泥炭湿地林の事例)

著者(所属)

門田 有佳子・清野 嘉之(森林総合研究所)、Lulie Melling・Christopher Damian・Auldry Chaddy (サラワク州立熱帯泥炭研究所)

掲載誌

TROPICS 24巻1号 2015年6月発行 DOI:10.3759/tropics.24.11(外部サイトへリンク)

内容紹介

マレーシアやインドネシアの熱帯泥炭湿地林は農地転換などにより急速に減少しており、森林減少による温室効果ガス排出量の推定が急がれています。この評価には森林全体の木の重さ(森林バイオマス)の情報が不可欠で、対象の森林に適したバイオマス推定式(アロメトリ式)を使って推定します。

マレーシア国サラワク州の熱帯泥炭湿地林に多く成立するフタバガキ科の樹種Shorea albidaの幹には空洞(樹洞:うろ)が多いと言われてきましたが、これまで詳しく調査されたことはありませんでした。そこで私たちは、サラワク州の森林で伐倒調査を実施し、地上部バイオマス(幹・枝・葉)、地下部バイオマス(根株・根)、樹洞のサイズを正確に測定しました。その結果、樹洞の容積は幹体積の約42%にも達し、樹洞の無い木のデータから作られた他の熱帯林のアロメトリ式ではバイオマスを過大推定することを明らかにしました。そこで、樹洞をもつ樹木が多い泥炭湿地林のための地上部と地下部のバイオマスを正確に推定するためのアロメトリ式を開発しました。

この成果は、湿地林の農地転換など土地利用変化が森林に与える影響を正確に評価するのに役立つだけでなく、固有種が多く生物多様性の観点からも重要な湿地林を適切に管理していくことにも貢献します。

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