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保存処理をしても低下しない集成材の耐火性能

2015年6月15日掲載

論文名

保存処理ラミナを積層接着した大断面集成材の防耐火性能

著者(所属)

原田 寿郎(構造利用研究領域)、上川 大輔(木材改質研究領域)、宮武 敦(複合材料研究領域)、桃原 郁夫(研究企画科)、宮林 正幸(ティー・イー・コンサルティング)、今村 祐嗣(建築研究協会)

掲載誌

木材学会誌、61巻2号、82-87、日本木材学会、2015年3月 DOI:10.2488/jwrs.61.82(外部サイトへリンク)

内容紹介

平成22年に「公共建築物等木材利用促進法」が施行され、公共建築物や中大規模建築物を木造で建てる機運が高まっています。ただし、一定規模以上の木造建築物を建てる場合は、火災に対する性能が求められるとともに、木材を腐りにくくするための保存薬剤処理が必要になります。しかし、日本農林規格(JAS)には集成材の保存処理に関する規定がありませんので、保存薬剤を注入した構造用の集成材はJAS製品として扱うことができません。そのため、通常の集成材には「燃えしろ設計(注1)」が認められているのに対して、保存処理集成材ではこの設計が認められていません。
保存薬剤を注入した構造用の集成材を、一定規模以上の木造建築物で使えるようにするには、薬剤を浸み込み易くするために木材に刃物で傷をつける加工(インサイジング加工)や注入される保存薬剤が、集成材の耐火性能に影響しないことを明らかにする必要があります。

そこで、インサイジング加工し、保存薬剤を注入した大断面集成材梁(はり)を作製して、実際の火事を想定した45分間の加熱試験を行ったところ、集成材は壊れず、炭化深さも基準となる35mm以下でした。つまり、保存処理をしていない集成材と同等の耐火性能を有することが明らかになったのです。

この成果は、保存処理された集成材をJAS製品として扱うためのJAS改正に活用できます。保存処理された集成材を通常の構造用集成材と同等に扱うことができるようになり、公共建築物等の木造化が一層加速するものと期待されます。

注1:火災時に避難が完了するまで建物が壊れないよう、構造上必要とされる柱や梁(はり)の断面に火事で炭化する厚みを付け加えた断面の集成材を用いる設計方法。

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