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海岸林が津波を抑える効果と津波に耐える力を数値化

2015年6月24日掲載

論文名

1) 実物樹木を対象とした水理実験によるクロマツの水力学的抵抗特性の評価

2) 海岸砂丘地に植栽された広葉樹およびクロマツの倒伏抵抗特性の引き倒し試験による評価

著者(所属)

1) 野口 宏典・鈴木 覚(気象環境研究領域)、坂本 知己(東北支所)

2)野口 宏典・鈴木 覚・南光 一樹(気象環境研究領域)、竹内 由香里(十日町試験地)、金子 智紀・新田 響平(秋田県林業研究研修センター)、渡部 公一(山形県森林研究研修センター)、坂本 知己(東北支所)

掲載誌

1) 海岸林学会誌、13巻2号、p45-50、日本海岸林学会、2014年12月

2) 海岸林学会誌、13巻2号、p59-66、日本海岸林学会、2014年12月

内容紹介

2011年の東日本大震災を契機に海岸林の津波減衰効果が改めて注目されています。そこで、海岸林が津波を抑える効果と津波に耐える力を調べました。
津波を抑える効果を調べるため、実験水路を用いて、流水中のクロマツの葉の抗力(流れに抗う力の大きさ)を測定しました。その結果、葉の抗力は流れが速くなるほど大きくなりましたが、その変化は流速が毎秒約1.5メートルまでは緩やかで、それ以上では大きくなることが分かりました。これは、流水にさらされた葉が、流れが比較的遅い範囲では流速に応じて変形するのに対して、ある程度以上の流速になると、それ以上は変形しなくなるためと考えられました。このような葉の抗力と流速の関係を数値的に明らかにしたのは、この研究が初めてです。

津波に耐える力については、海岸地域に植栽されたクロマツと広葉樹の引き倒し試験により調べました。その結果、引き倒しに必要な力の大きさは樹種によって異なり、同じ樹種では幹の太い樹木ほど大きくなりました。樹木が引き倒しに抵抗する力は根によって発揮されます。これは、根の分布や強度が樹種によって異なり、同じ樹種では幹の太い樹木ほど根の量も多いためと考えられました。

これらの研究成果は、海岸林を通過する津波の数値シミュレーションの信頼性を高め、津波減衰効果の高い海岸林の計画や管理の検討に役立つことが期待されます。

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