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永久凍土の森林の樹木は、細かい根を極端に増やして生きる

2015年7月13日掲載

論文名

Fine root biomass in two black spruce stands in interior Alaska: effects of different permafrost conditions (アラスカ内陸部のクロトウヒ林2林分における細根バイオマス:異なる永久凍土条件の影響)

著者(所属)

野口 享太郎 (立地環境研究領域)、松浦 陽次郎 (国際連携推進拠点)、Stephen D, Sparrow ・Larry D. Hinzman (アラスカ大学)

掲載誌

Trees-Structure and Function、2015年11月頃(予定)、DOI: 10.1007/s00468-015-1226-z(外部サイトへリンク)

内容紹介

北極をとりまく周極域に分布する永久凍土には、莫大な量の炭素が蓄積されています。そのため、永久凍土の上に成り立つ森林での炭素の動きを知ることは、地球全体の炭素の動きを理解し、温暖化対策を進めるために不可欠です。しかし、永久凍土上の森林の炭素の動きに関わるバイオマスや成長についてのデータは少なく、特に凍土環境の違いがどう影響するかについては、よく分かっていませんでした。
そこで、私たちは、アラスカ内陸部の凍土深の異なるクロトウヒ林で、土壌への主要な炭素供給源である細根(直径2mm以下の根)の量を明らかにすることを目的に研究を行いました。その結果、永久凍土上のクロトウヒ林では、地上部(幹、枝、葉)に対する細根の量の比率が20~50%で、温帯林などで普通に見られる「5%以下」と比べて、著しく大きいことが明らかになりました。また、この細根/地上部の比率は凍土深の浅い林分で大きいこと、細根の中でも特に直径0.5mm以下の細い細根の量が多いことが分かりました。
これらの結果は、永久凍土の上のクロトウヒ林の樹木が、細い根の量を極端に大きくして養分吸収能を高めることで、永久凍土という極限環境に適応していることを示唆しています。今後は、これらの細根を通じて実際に炭素がどう動いているのかを明らかにすることが重要です。

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