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降雨の窒素増加はスギの衰退を招かない

2015年10月16日掲載

論文名

Changes in the carbon and nutrient status of Cryptomeria japonica needles and fine roots following 7 years of nitrogen addition (7年間窒素添加を受けたスギの葉と細根における炭素濃度と養分濃度の変化)

著者(所属)

長倉 淳子(立地環境研究領域)、赤間 亮夫(企画部)、重永 英年(九州支所)、溝口 岳男(関西支所)、山中 高史(森林微生物研究領域)、田中 (小田) あゆみ(立地環境研究領域)、丹下 健(東京大学)

掲載誌

Plant Root, 9, 95-102, 2015 DOI:10.3117/plantroot.9.95(外部サイトへリンク)

内容紹介

わが国では、大都市近郊の平野部などで1980年頃からスギ林の衰退が報告され、その原因として、気温上昇による乾燥化が指摘されました。一方、欧米では大気汚染や化学肥料の使用増加に伴って森林に流入する窒素量の増加が指摘されていました。わが国でも都市近郊では、雨とともに森林に流入する窒素量が増えていることから、窒素量とスギ林の成長との関係を明らかにする必要がありました。

本研究では、スギ林に通常の雨の約12倍および約24倍量の窒素を散布する試験を7年間続け、流入する窒素量の増加がスギの成長に及ぼす影響を調べました。その結果、窒素を多く与えると、スギの葉や細根に含まれる窒素量は増加しましたが、カリウムやリンの量は低下する傾向がみられました。しかしスギの直径や樹高の成長量は増えも減りもしませんでした。これらの結果から、森林に流入する窒素量が増加しても、スギの衰退をもたらす可能性は小さいことが分かりました。

森林に流入する窒素量の増加は今後も続く可能性があります。スギの生理特性や土壌特性などを含め、衰退現象の要因を明らかにしていく必要があります。

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