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葉を透かせば樹木の水の使い方が分かる

2015年10月16日掲載

論文名

Leaf water use in heterobaric and homobaric leafed canopy tree species in a Malaysian tropical rain forest(マレーシア熱帯雨林における異圧葉と等圧葉林冠樹木の葉の水利用)

著者(所属)

井上 裕太(愛媛大学)、田中 憲蔵(植物生態研究領域)、田中 (小田) あゆみ(立地環境研究領域)、米山 仰(愛媛大学)、市栄 智明(高知大学)

掲載誌

Photosynthetica、53:177-186、2015年5月発行(オンライン)、DOI:10.1007/s11099-015-0105-6(外部サイトへリンク)

内容紹介

葉を光に透かしてみると、クスノキのように網目状の葉脈がはっきり見える種と、ツバキのようにほとんど見えない種があります。前者は異圧葉、後者は等圧葉と呼ばれます。異圧葉の断面を観察すると、葉脈(維管束)の周りに葉緑体を持たない透明な組織が発達し、葉の表と裏の表皮に到達しています。ここを光が通過するため、異圧葉を透かせば明瞭な葉脈網が見えるのです。一方、等圧葉はこの組織が無く、表皮と葉脈の間に緑色の葉肉細胞が詰まっているので葉脈は明瞭に見えません。

高さ30m~50mに達する熱帯雨林の林冠を構成する樹木には、異圧葉を持つ樹種と等圧葉を持つ樹種の両方が生育しています。林冠は強い直射光を受けるので、日中は高温や乾燥ストレスにさらされやすくなります。このような環境で、両タイプの樹種の間で蒸散や光合成などの生理的な能力がどう異なるのかを調べて比較しました。

その結果、フタバガキ科など異圧葉を持つ樹種は、高い光合成能力を持ち、直径成長も高い反面、蒸散量が多く水をより多く消費するため、乾燥ストレスを受けやすくなっていました。一方、等圧葉の樹種は、光合成能力や蒸散量が低く、成長速度が小さいものの、水分消費をできるだけ抑えて乾燥の影響を回避していました。

年中湿潤な熱帯雨林の林冠層では、対照的な水利用をする樹木が共存していることがわかりました。今後、東南アジアの熱帯雨林では、エルニーニョなどの影響で強い干ばつが頻発すると予想されています。そうした気候変動が熱帯林に及ぼす影響を明らかにするために、さらに熱帯樹木の葉の特徴と生理的な特性の関係についての理解を深めていきます。

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