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枝の“水切り”で樹木の水分状態を正確に測る

2015年12月24日掲載

論文名

1) Cutting stems before relaxing xylem tension induces artefacts in Vitis coignetiae, as evidenced by magnetic resonance imaging. (ブドウにおける木部負圧下にある樹幹の切断時に生じるアーティファクトのMRIによる証拠)

2) Freezing xylem conduits with liquid nitrogen creates artifactual embolisms in water-stressed broadleaf trees. (水ストレス下にある広葉樹における液体窒素による木部通水組織の凍結に伴うアーティファクトとしてのエンボリズム)

著者(所属)

1) 小笠 真由美(植物生態研究領域)、内海 泰弘(九州大学)、三木 直子(岡山大学)、矢崎 健一(植物生態研究領域)、福田 健二(東京大学)
2) 梅林 利弘(東京大学)、小笠 真由美(植物生態研究領域)、三木 直子(岡山大学)、内海 泰弘(九州大学)、拝師 智之(MRテクノロジー)、福田 健二(東京大学)

掲載誌

1) Plant, Cell and Environment, October 2015 DOI:10.1111/pce.12617(外部サイトへリンク)
2)Trees, October 2015 DOI:10.1007/s00468-015-1302-4(外部サイトへリンク)

内容紹介

植物は一般に、葉に光が当たると光合成に必要な二酸化炭素を取り込むために気孔を開きますが、このとき同時に気孔から水が蒸発します(蒸散)。蒸散によって葉が乾燥するのをきっかけに、道管(水を通す組織)の中の水に張力がかかり、これが葉から枝、茎、根を経て最終的に土壌中の水まで伝わることで、葉まで水が引っ張りあげられています。しかし、張力がかかっている枝を切ると、切り口の道管に空気が入ってしまい、枝を水に挿しても葉まで水が届かなくなります。そこで、切った枝を長持ちさせるため、枝の切り口から道管に空気が入りこまないように、枝の“水切り”が広く行われてきました。

今回、枝を水切りする前と後の道管の中の水の変化をMRIを用いて観察したところ、枝の中の道管のごく一部では、もともと水が入っていた道管が水切り後に空洞化したり、すでに通水機能を失い空洞化していた道管に水切り後に水が入ったりする現象が確認されたものの、ほとんどの道管では水切り前後で道管の水の有無の状態に変化はありませんでした。

このことから、枝を“水切り”することで、切った枝でも本来(枝を切る前)とほぼ同じ通水領域が維持されることがわかりました。これは、今後、樹体内のどの領域で水が流れているのか、病気や環境ストレスによってどの領域で通水阻害が起こっているのかを正確に調べる上で、枝の“水切り”の重要性を示すものです。

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