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微生物の力で木材の主要成分であるリグニンを様々な工業製品の原料にすることに成功

2016年7月15日掲載

論文名

Engineered Microbial Production of 2-Pyrone-4,6- Dicarboxylic Acid from Lignin Residues for Use as an Industrial Platform Chemical (リグニン残渣から工業原料として2-ピロン-4,6-ジカルボン酸を組換え微生物発酵により生産する)

著者(所属)

Yun Qian(Virginia Tech)、大塚 祐一郎(森林資源化学研究領域)、園木 知典(弘前大)、Biswarup Mukhopadhyay(Virginia Tech)、中村 雅哉(森林資源化学研究領域)、Jody Jellison(University of Massachusetts, Amherst)、Barry Goodell(Virginia Tech)

掲載誌

BioResources, 11(3), 6097-6109, August 2016 URL:https://www.ncsu.edu/bioresources/BioRes_11/BioRes_11_3_6097_Qian_OSMNJG_Engd_Microbial_Pyrone_Dicarboxylic_Acid_Lignin_Residue_Platform_9323.pdf(外部サイトへリンク)

内容紹介

木材の主要成分の一つであるリグニンはポリフェノールの一種で、芳香族物質(注1)が複雑に結合した高分子物質です。リグニンの利用に関しては、そのまま利用するという研究もなされてはいますが、これまで有効な利用方法は見つかっていません。一方で、リグニンは化学反応により低分子化することが可能ですが、もともと複雑な構造のため、分解しても様々な物質の混合物となってしまい、工業的に利用することが困難となっています。

私どもはこれまでの研究で、リグニンを化学反応によって低分子化した際にできる様々な物質をPDC(2-ピロン-4,6-ジカルボン酸)という一つの物質に変換・蓄積できる組換え微生物を開発してきました。PDCは様々な工業製品の原料として利用できることが明らかとなっており、例えばポリエチレンフィルムや伸縮性のポリウレタン、強力な接着剤、抗菌剤などがこれまで開発されてきました。また最近では、PDCが選択的な放射性セシウム(注2)の沈殿剤としての機能があることもわかってきており、汚染水の浄化への貢献も期待されています。

しかしながら、リグニンから化学分解によって生じる様々な物質の中には、微生物による変換を阻害するものが含まれていることが予想され、実用化に際して実際に木材中のリグニンを原料にしてPDCが高効率に製造できるかは未確認のままでした。そこで、針葉樹のスギあるいは広葉樹のシラカバを原料として、ニトロベンゼン酸化反応という化学分解によってリグニンを低分子化して得られた混合物を直接組換え微生物の発酵槽に投入したところ、発酵条件を調整することでほぼ全ての混合物をPDCへと変換することが可能であることを実証しました。この成果は、木材の主要成分であるリグニンを既存の工業製品製造システムに利用可能な原料となることを意味しています。

 

 注1) 芳香核物質:化学的には「ベンゼン環を含む物質」と定義され、この中にはバニリンなどバニラのような甘い芳香を持つものも含まれます。

     注2) 放射性セシウム:福島第一原発事故で放出されたり、炉心内部に留まったりしている放射能のあるセシウム原子のことを指します。

 

木材から直接抽出したリグニン成分をファインケミカルに変換することが可能

(図1:組換え微生物発酵により木材から直接抽出したリグニン成分をPDCというファインケミカルに変換することが可能になりました)

 

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