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小笠原群島内におけるモモタマナの遺伝的な違いは氷期からの海水面変動が影響していた

2016年2月26日掲載

論文名

Genetic variation of pantropical Terminalia catappa plants with sea-drifted seeds in the Bonin Islands: Suggestions for transplantation guidelines. (小笠原諸島における汎熱帯性樹木モモタマナの遺伝的変異:植栽ガイドラインへの提言)

著者(所属)

鈴木 節子(森林遺伝研究領域)、大谷 雅人(林木育種センター北海道)、須貝 杏子(野生動物研究領域)、永光 輝義(森林遺伝研究領域)、加藤 英寿(首都大学東京)、吉丸 博志(森林遺伝研究領域)

掲載誌

Plant Species Biology, Jan 2016,DOI:10.1111/1442-1984.12121(外部サイトへリンク)

内容紹介

小笠原諸島では貴重な生態系を再生するために外来樹の駆除を行っていますが、駆除後に再び外来樹が更新してしまう場合などは、人為的に在来樹を植栽し、在来生態系再生の手助けをする必要があります。しかし、在来樹といえども不用意な種苗の移動は遺伝的攪乱を引き起こす危険性があるため、植栽樹種の遺伝的変異を把握した上で植栽の可否を決める必要があります。

モモタマナ(Terminalia catappa)は小笠原諸島の海岸林の主要な在来樹種です。種子は大きさが5センチほどあり、果実食のオオコウモリや海流によって散布されます。小笠原諸島の聟島・父島・母島列島の22サイトからモモタマナを収集し、DNAマーカーを用いて遺伝的変異を調べました。聟島列島と父島列島は遺伝的に類似していましたが、母島列島は遺伝的に異なることが示されました。さらに、島間の最大水深が50mより深い場合、それらの島は遺伝的に異なることが示されました。最終氷期から現在にかけての海水面変動による島同士の連結と分離の歴史が、このような遺伝的な違いに影響したと考えられました。これらの結果をもとに、小笠原におけるモモタマナの植栽は、列島間の種苗の移動は避ける、島間の水深が50m以上の島(西島、姉島、妹島)と他の島の間は種苗の移動は避ける、という指針ができました。今後の小笠原における在来生態系再生事業に活用できると期待されます。

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