研究紹介 > 研究成果 > 研究最前線 2016年紹介分 > スギ林の間伐で枝葉を1回持ち出しても土壌養分への影響は小さい
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2016年3月11日掲載
論文名 |
Short-term impacts of logging residue at thinning on cation dynamics in Japanese cedar (Cryptomeria japonica) forest soils in northern Japan. (枝条収穫を伴う間伐がスギ林土壌の交換性塩基動態に及ぼす短期影響) |
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著者(所属) |
山田 毅・平井 敬三(立地環境研究領域)、竹中 千里(名大院)、西園 朋広(森林管理研究領域)、天野 智将(東北支所) |
掲載誌 |
森林立地 57巻2号、p93-100、森林立地学会、 2015年12月(印刷中) |
内容紹介 |
再生可能エネルギーとして森林バイオマスの有効利用が期待され、枝葉を含めて収穫する“全木集材”も進められていますが、有機物を林外に持ち出されるために土壌養分*や林地生産性の低下が心配されます。そこで、間伐時の枝葉収穫が土壌の養分に及ぼす影響を秋田県の48年生スギ林で調査しました。 土壌表層の養分量については、枝葉を持ち出した場合でも減少していませんでした。林地には間伐前から枯枝や枯葉が落ちて徐々に分解しています。こうした林地の有機物が分解して土壌に供給される養分量は、土壌から滲み出して(溶脱)失われていく養分量を上回っていました。そのため間伐で枝葉を持ち出した場合でも林木の成長には影響がありませんでした。この試験地のように、林地が落葉などで覆われ、もともとの土壌養分量が十分大きい場合には、間伐による養分量への影響は小さいことが明らかになりました。 森林のバイオマス利用を進める一方で、こうした利用が森林環境に及ぼす影響を明らかにしておく必要があります。生態的な変化に富む日本ではこうした調査研究を積み重ねていくことが重要であり、土壌の養分状態が異なる森林で土壌環境への影響を明らかにしていく必要があります。
*養分:植物が利用可能な形態のカルシウム、マグネシウム、カリウムを指します。 |
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