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薬品や高温を必要としない新しい木材の成分分離法を開発しました

2016年11月1日掲載

論文名

Simpleand practicable process for lignocellulosic biomass utilization (簡単で現実的なリグノセルロースバイオマスの処理法)

著者(所属)

敷中 一洋(東京農工大学)、大塚 祐一郎(森林資源化学研究領域)、Ronald R. Navarro(森林総研PD)、中村 雅哉・下川 知子・野尻 正信(森林資源化学研究領域)、谷川 遼・重原 淳孝(東京農工大学)

掲載誌

GreenChemistry、Royal Society of Chemistry 、September 2016、DOI:10.1039/c6gc01927g(外部サイトへリンク)

内容紹介

木材は地球上で最も多量に存在するバイオマスの一つであり、石油資源と異なり再生可能な資源です。この木材は主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンという3つの物質で構成されています。我々は昔からこれら3つの成分を分離して紙やパルプの原料などを作って利用してきました。また近年ではセルロース、ヘミセルロースからバイエタノールといった燃料やセルロースナノファイバーという新しい工業素材を作る技術が開発されており、リグニンからも炭素繊維やプラスチック原料などが開発されつつあります。これまでに、これら3つの成分の分離には、強酸や強アルカリといった劇物とされる薬品を使ったり、高温高圧といったエネルギーを多量に消費する処理が必要でした。

今回我々は酸やアルカリといった薬品を使用せず、かつ高温高圧の処理も必要としない「湿式ミリング処理」という新しい成分分離法を開発しました(図参照)。これは超微細ビーズミルという機械で木材を水中でナノレベルに粉砕しながら糖分解酵素の作用によりセルロース、ヘミセルロースを糖成分に変換し溶かし出す方法です。これによりセルロース、ヘミセルロースが分解され溶け出した糖液と分解されず残渣となったリグニンを得ることができます。得られた糖液に直接酵母を加えて発酵するとバイオエタノールが生産できました。またリグニンは酸やアルカリで容易に変質してしまうデリケートな物質ですが、この方法ではほとんど変質しないことも明らかとなりました。またこの変質していない糖化残渣リグニンとポリプロピレンという熱可塑性プラスチックを4:1の割合で混合すると、通常のポリプロピレンと比較して剛性が高く難燃性のある素材を得ることができました。

今後は、実用化を見据えたスケールアップや糖化残渣リグニンのさらなる利用法の開発を行う予定です。

 

写真:薬品や高温を必要としない新しい木材の成分分離法を開発

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