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造林地で下刈りを実施するかどうかの指標が見えた

2016年12月8日掲載

論文名

スギ植栽木の樹高成長に及ぼす期首サイズと周辺雑草木の影響

著者(所属)

山川 博美(森林植生研究領域)、重永 英年(林野庁研究指導課)、荒木 眞岳(植物生態研究領域)、野宮 治人(九州支所)

掲載誌

日本森林学会誌、98巻5号、241-246、日本森林学会、2016年12月、 DOI:10.4005/jjfs.98.241(外部サイトへリンク)

内容紹介

国内の人工林は主伐可能な40年生以上の林分が7割を超え、本格的な利用の時期を迎えています。しかしながら、木材価格の上昇は期待されず、持続的な林業経営のためには、伐採、植栽、保育といった木材生産と森林の保育のコスト削減が不可欠です。なかでも「下刈り」は最も費用と労力を必要とする保育作業で、早急なコスト削減が求められています。

一般に、下刈りは植栽後5~6年間、年1~2回の頻度で実施されています。本研究では、下刈りコストを削減する方法として、下刈り回数に着目し、下刈り回数を減らした際のスギ植栽木の成長を調べました。スギ植栽木の樹高成長は、樹冠の先端部が周辺の雑草木から完全に埋もれてしまうまでは顕著な低下がないことがわかりました。また、雑草木に多少埋もれたとしても、スギ植栽木の樹高がおおよそ160cmを超えると樹高成長へのマイナスの影響は小さくなることがわかりました。このことはスギ植栽木の樹高が160cmを超えた場合の葉量が関係していると推測されます。

上記の結果は、これまでのように毎年下刈りを実施する必要がないことを示唆しています。また、樹高160cm程度までは下刈りを実施した方が好ましく、スギ植栽木の樹冠が完全に雑草木によって埋もれてしまうかどうかが下刈り要否の判断指標となり得ることが明らかになりました。

 

写真:植栽木と雑草木が競争するスギ若齢人工林

写真:植栽木と雑草木が競争するスギ若齢人工林

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