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安定炭素同位体を用いて分かったブナの豊凶メカニズム

2017年1月12日掲載

論文名

(1) Reproduction-relatedvariation in carbon allocation to woody tissues in Fagus crenata using anatural 13C approach (安定炭素同位体アプローチによるブナの木質器官への炭素配分過程における変化の解析)

(2) Parameterization andvalidation of a resource budget model for masting using spatiotemporalflowering data of individual trees (個体の開花データに基づく資源収支モデルのパラメータリゼッションと検証)

著者(所属)

(1) 韓 慶民(植物生態研究領域)、香川 聡(木材加工・特性研究領域)、壁谷 大介(植物生態研究領域)、稲垣 善之(四国支所)

(2) 阿部 友幸(北海道立総合研究機構林業試験場)、立木 佑弥(九州大学)、今 博計・長坂 晶子・小野寺 賢介・南野 一博(北海道立総合研究機構林業試験場)、韓 慶民(植物生態研究領域)、佐竹 暁子(九州大学)

掲載誌

(1) Tree Physiology, 36(11):1343-1352,Oxford University Press, September 2016, DOI: 10.1093/treephys/tpw074(外部サイトへリンク)

(2) Ecology Letters,19(9):1129-1139, Wiley, September 2016, DOI: 10.1111/ele.12651(外部サイトへリンク)

内容紹介

多くの樹木では、種子の生産量が年により大きく変動する豊凶現象がみられます。例えば、北日本の落葉広葉樹を代表するブナの場合、豊作年と凶作年では種子の量に数百倍の開きがあります。この豊凶現象が起こるメカニズムについては、気象条件の影響や、植物自身の成長や開花・結実など繁殖器官へ配分される資源(炭水化物)の量的制約などから説明が試みられていますが、まだよくわかっていません。

この研究では、こうした豊凶現象の解明に向けて、苗場山のブナ林で定期的に葉や枝、種子などを採取し、それらの安定炭素同位体(13C)比を分析する手法を用いて、いつどのような炭水化物が各器官の成長に配分されているのか調べてみました。その結果、新しい枝の成長には、結実の有無とは関係なく、その年に光合成で作られた新しい炭水化物がおもに利用されていました。しかし、結実した個体では、種子の成熟にも多くの新しい炭水化物が必要になるため、枝のサイズが小さくなり、また樹体内に貯蔵されていた古い炭水化物も種子の成長へ配分するなど、利用する炭水化物の種類を変化させることで、種子生産に伴う炭素資源の制約に対して巧妙にやりくりしていることがわかりました。さらに、北海道南部のブナ林で10年以上観察された170個体の開花挙動のデータをもとに数理モデルで解析したところ、ブナの豊凶現象は窒素資源の年変動と関係があることもわかってきました。これらの結果は、種子の豊凶を予測する技術に利用することで、天然更新の成否を判定したり、種子を餌にするツキノワグマなどの出没頻度の予測など、ブナ林の保全管理に幅広い活用が期待されます。

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