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2017年1月19日掲載
論文名 |
A feasibility study fordetermining the mean annual aboveground biomass gain of tropical seasonalforests in Cambodia (カンボジアの熱帯季節林の年平均地上部バイオマス増加量を定めるための予備的研究) |
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著者(所属) |
清野 嘉之(植物生態研究領域)、伊藤 江利子(北海道支所)、門田 有佳子(京都大学)、鳥山 淳平(九州支所)、齋藤 英樹(森林管理研究領域)、古家 直行(北海道支所)、SUM Thy(カンボジア環境省)、TITH Bora・KETH Nang・KETH Samkol・CHANDARARITY Ly・PHALLAPHEARAOTH Op・CHANN Sophal・SOKH Heng (カンボジア森林局) |
掲載誌 |
TROPICS、 25(4)、 創文印刷・日本熱帯生態学会、 2017年1月(オンライン)、 DOI:10.3759/tropics.MS15-27(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
REDDプラスでは森林の炭素量がどう増減しているかを知ることが重要であるため、炭素量の変化速度のデータが必要となります。変化速度のデータを得る方法は二つありますが、そのうちの一つである蓄積変化法(変化速度=[ある時点の量−つぎの時点の量]/時間)は、同じ林を繰り返し調べる必要があるため、開発途上国の中でもカンボジアのように土地利用変化が激しい場合には適用が難しい方法です。 そこでもう一つの方法であるゲイン―ロス法(変化速度=増加速度−損失速度)をカンボジアの森林に適用し、バイオマスの増加速度と損失速度を調べ、そこから変化速度を求めました。カンボジア全土に配置した49の固定調査プロットの10年間のデータにもとづいて、カンボジアの熱帯季節林の代表となる地上部バイオマスの増加速度を算出し、それを地上部バイオマスで推定できることを示しました。伐採があっても、失われるバイオマスが2割までなら、残った木の成長が盛んになってバイオマス増加速度はあまり変わらないことも分かりました。 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は熱帯の天然林のバイオマス増加速度に利用できる値を林齢区分別に示しています。しかし、一般的に熱帯では、天然林は林齢が分かりません。この点において、本研究で示した林齢の情報を必要としない方法は、IPCCで示されている値を用いるより実用的です。カンボジアで行われるREDDプラスの取り組みに本研究の結果が活用されます。 注) REDDプラス 伐採や林地転用のような土地利用変化により、森林から大気に二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが放出されます。REDDプラスは、このガスの放出量を減らす途上国の森林保全の取り組みに、経済的利益が生まれるようにする国際的方式です。国連が中心になってルール作りを進めています。
写真:地上部バイオマスの継続調査を実施している調査プロット |
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