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アラスカ・クロトウヒ林のバイオマスや菌根依存性は凍土の条件で変わる

2017年1月27日掲載

論文名

Variabilityin the growth rates and foliage δ15N values of black spruce trees across a slopegradient in the Alaskan Interior (内陸アラスカにおける斜面位置によるクロトウヒの成長と葉の窒素安定同位体比の変化)

著者(所属)

田中(小田)あゆみ(立地環境研究領域)、田中 憲蔵(植物生態研究領域)、 鳥山 淳平(九州支所)、松浦 陽次郎(国際連携・気候変動研究拠点)

掲載誌

Canadian Journal of Forest Research、46(12):1483-1490、December 2016、DOI:10.1139/cjfr-2015-0469(外部サイトへリンク)

内容紹介

アラスカ内陸部では、永久凍土が分布する北向き斜面にクロトウヒ林が成立します。温暖化による凍土の融解により、森林の構造や炭素循環などに深刻な影響がでる可能性がありますが、その予測のためには、どのような環境因子が樹木の成長や養分吸収に関わっているのか解明する必要があります。

この研究では、北向き斜面に分布する約100年生のクロトウヒ林を対象に、林分の構造や成長、葉の養分状態などを調べました。その結果、斜面下部には樹高わずか数mの疎林が分布する一方、上部には樹高10m以上の森林が発達することが分かりました。この違いには、地下の凍土のうち、毎年夏の間に融ける土壌の表層部(活動層)の深さが関係しています。つまり、斜面の下部ほど活動層が薄くて凍土の融解水が停滞しやすく、根も深く伸長できないため、窒素など成長に必要な土壌養分の吸収が著しく制限される環境と考えられました。このように根の伸長が制限される斜面下部のクロトウヒは、代わりに根に多くの菌根菌を共生させ貧栄養な土壌から養分を吸収していましたが、菌根菌を養うために多量の光合成産物が必要になり、樹高成長は抑制されていると考えられます。以上から、クロトウヒは斜面位置による凍土環境に応じて菌根菌と共生し、アラスカの厳しい環境に適応していることが分かりました。この成果は、温暖化に伴う凍土の融解や消失による樹木の成長や菌根菌との共生関係の影響予測に役立ちます。

 

写真2:クロトウヒ林

写真:森林火災後に一斉更新したクロトウヒの林なので、斜面の上部でも下部でも樹齢は約100年でほとんど同じである。しかし驚くべきことに、斜面上部のクロトウヒ林は樹高が10m以上に成長しているのに、斜面下部ではわずか数mしかない。

土壌を掘ると、斜面上部では凍土面の深さは1m前後だが、下部では10~40cmと浅い。ミズゴケが厚く堆積している場所では、有機物層の直下に氷を含んだ凍土(黄色矢印)が現れる。根系は常に低温にさらされ、窒素など養分の吸収が制限されていると考えられる。

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