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急斜面での枝葉の搬出は保水力の低下を招く

2017年6月12日掲載

論文名

枝条収穫の違いがスギ林土壌の理化学特性と林分成長に及ぼす影響

著者(所属)

山田 毅(立地環境研究領域)、高橋 幸男(釜石地方森林組合)、西園 朋広(森林管理研究領域)、小谷 英司・天野 智将(東北支所)、平井 敬三(立地環境研究領域)

掲載誌

森林立地、58巻2号、61-68、森林立地学会、2016年12月、DOI:10.18922/jjfe.58.2_61(外部サイトへリンク)

内容紹介

木質バイオマスは再生可能なエネルギー源として注目されています。日本各地に木質バイオマス発電所の設置が進む中で、バイオマス燃料として未利用の間伐材とともに従来は伐採後に林地に残されていた枝葉の利用も進められようとしています。林地に残された枝葉は分解して木々の養分になるだけでなく、地表面を保護して土壌侵食を防ぐ役割などもあります。

そこで、急斜面での枝葉の搬出が土壌に及ぼす影響をあきらかにするため、土壌の孔隙率(土の中に水や空気をためることができる空間の割合)を、幹と枝葉の両方を搬出した場合、幹だけを搬出した場合、間伐せずに幹や枝葉の搬出をしない場合、の3つの処理を行って比較しました。調査は岩手県釜石市にある間伐後3年を経過した45年生スギ人工林(斜度32~43度)で行いました。

幹と枝葉の両方を搬出した場合には、土壌表層の孔隙率が他の2つの場合に比べて15%低くなりました(図)。これは幹だけでなく枝葉まで搬出すると、地表面を保護する覆いがなくなり、土壌に雨滴が直接あたるため、孔隙がふさがれたためです。そのため、土壌内部への雨水の浸透が妨げられて、保水力の低下につながると考えられます。

今回の結果は、急傾斜地では皆伐・間伐を問わず枝葉の搬出を避けるべきであることを示しています。一方、緩傾斜地では枝葉の搬出量を少なくすることや林床の植生量を増やすことによって地表面を保護し、孔隙率を維持することが可能であると考えられます。今後は、それぞれの土地の環境条件に照らしながら枝葉の搬出割合(何%まで搬出が可能か?)を見極める必要があります。

 

図:間伐後の幹や枝葉の搬出が土壌表層の孔隙率に及ぼす影響

図:間伐後の幹や枝葉の搬出が土壌表層の孔隙率に及ぼす影響
エラーバーは標準偏差(データのばらつき具合)を示す。

異なった記号で示された処理間には孔隙率の平均値に有意な差があることを示す(p<0.05)。

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