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原木の形質は製材業の発展方向を大きく左右してきた

2017年6月29日掲載

論文名

1960年代以降における国内製材業の展開と素材需要

著者(所属)

嶋瀬 拓也(北海道支所)

掲載誌

林業経済研究、63巻1号、3-14、林業経済学会、2017年3月

内容紹介

近年、国内製材業による国産材利用の動きが活発化しています。需要の低迷に悩まされてきたわが国の林業界にとっては、待ち望んだ動きといえます。この動きが今後どのように進展していくかについて、より確かな見通しを得るため、原木の利用状況に注目しつつ、国内製材業の歴史を振り返りました。

木材輸入が本格化した1960年代、製材業界の各企業は、世界各地から集まる多様な樹種の中から思い思いに原木を選び、さまざまな用途の製品(製材品)を作り始めました。しかし、市場競争を通じて、樹種ごとの形質(材質や形状)を生かした製品を作る企業・産地だけが生き残り、原木の樹種と製品の用途(品目)の間の対応関係が強まっていきました(図1)。さらに、同じ樹種の原木から同じ用途の製品を作る企業・産地の中でも、工場の大型化などによって競争力を高めたものだけが発展し、樹種・品目ごとに全国に数か所ずつ、主産地が形成されました(図2)。

2000年代以降、国内人工林資源の充実や輸入材の入手難を受けて、国産材への切り替えが進んでいます。しかし、原木の樹種ごとに特定の品目へと集中し、そのことが製材業・製材産地の展開に大きな影響を及ぼしてきた歴史を踏まえると、この切り替えの動きも、製材業の構造を大きく揺るがすものとなることが予想されます。原木樹種と生産品目の新たな組み合わせが模索される中、国産材がより多くの分野に浸透していけるよう、産官学を挙げた生産・流通・加工の合理化や技術開発などの取り組みが求められます。

 

図1:原木別にみた用途(品目)別製材品出荷構成の推移

 

図1:原木別にみた用途(品目)別製材品出荷構成の推移

原木の種類ごとに、特定の用途(品目)に集中していきました。

 

図2:製材業の産地構造(2005年頃・一部省略)

 

図2:製材業の産地構造(2005年頃・一部省略)

原木樹種・生産品目ごとに、全国数か所ずつ、主産地が形成されました。

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