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気候変動によりマツ材線虫病の危険域は世界的に拡大する

2017年9月11日掲載

論文名

Potential distribution of pine wilt disease under future climate change scenarios (気候変動シナリオにもとづくマツ材線虫病の潜在リスク域の評価)

著者(所属)

平田 晶子(国際連携・気候変動研究拠点)、中村 克典(東北支所)、中尾 勝洋・小南 裕志(関西支所)、田中 信行(東京農業大学)、大橋 春香(国際連携・気候変動研究拠点)、高野 宏平(長野県環境保全研究所)、竹内 渉(東京大学生産技術研究所)、松井 哲哉(国際連携・気候変動研究拠点)

掲載誌

PLoS ONE、12(8)、 e0182837、 August 2017 DOI: 10.1371/journal.pone.0182837(外部サイトへリンク)

内容紹介

日本のマツ林に深刻な被害をもたらしてきたマツ材線虫病(以下、マツ枯れ)は、東アジアや西ヨーロッパでも深刻な被害をもたらしています。マツ枯れの発生は気温と密接な関係があることから、気候変動による被害域の北方への拡大が懸念されています。また、気候変動によって気候条件がマツの分布に適さなくなる地域では、マツ枯れに対する脆弱性がより高まる可能性があります。

そこで、マツ枯れ抵抗性が低い世界の感受性マツ21種の天然分布域を対象に、現在および将来の気候変動シナリオ下でのマツ枯れ危険域と、気候条件がマツにとって適さない地域を推定しました。

その結果、現在の気候条件では、東アジアや南ヨーロッパのマツ分布域が危険域として判定され、現にこれらの危険域の多くで、すでにマツ枯れが発生していました。また、気候変動に伴って、危険域は東ヨーロッパや中央アジア、極東ロシアにまで拡大すると予測されました。将来の気温上昇量が大きい気候変動シナリオ下では、危険域は感受性マツ天然分布域の50%にまで拡大し、しかもその約40%はマツの分布に適さない気候条件になってしまう可能性が示されました。

気候変動が進行した場合には、現在より北方の地域でもマツ枯れ対策が必要になる可能性があります。本研究の結果は、マツ枯れ拡大の阻止に取り組んでいる国々にとって重要な基礎情報となるほか、気候変動に伴う被害拡大の予防にも役立てられます。


図:気温が現在よりも平均で3.7℃上昇すると予測されている気候変動シナリオ

図:気温が現在よりも平均で3.7℃上昇すると予測されている気候変動シナリオ(代表的濃度経路シナリオ8.5)にもとづく将来(2061-2080年)のマツ枯れ危険域とマツの分布に不適な気候条件となる地域(DOI: 10.1371/journal.pone.0182837から一部を掲載)

濃茶の地域は、松枯れの危険域であると同時に、マツの分布には不適な気候条件になると予測された地域です。このような地域では、マツは現在よりも厳しい環境におかれるため、マツ枯れリスクもより高くなる可能性があります。

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